作品情報 2015年ドイツ映画 監督:ダーヴィト・ヴネント 出演:オリヴァー・マスッチ、ファビアン・ブッシュ、クリストフ・マリア・ヘルプスト 上映時間:116分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズららぽーと横浜 2016年劇場鑑賞130本目
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【ストーリー】
1945年、敗北寸前だったヒトラー(オリヴァー・マスッチ)は気づけば2014年にタイムスリップしていた。新聞販売店で70年分の歴史を勉強したヒトラーに、テレビ局をリストラされたディレクター、ザヴァツキ(ファビアン・ブッシュ)が目を付ける。
ヒトラーのそっくりさんと勘違いしたザヴァツキは、ヒトラーを政治ショーに出演させる芸人にスカウトしようと決めたのだ。過激な発言が現代のドイツの政治状況にぴたりとあい、ヒトラーはテレビで大人気となるのだが…
【感想】
映画で登場人物にぼかしが入っているシーンが何カ所かあり、何かと思ったら、ヒトラーが各地を回って住民と意見交換するシーンは、フィクションの映画とはいわずに、ドキュメンタリーのように撮影したそうです。つまり、住民のリアルな本音が流れているのですね。
しかも、「移民に店を荒らされるけど、文句を言えば排外主義者といわれるからいえない」などといった、解決困難な悩みに、ずばずばと本音でアドバイスしていきます。そして、「大衆の望むことをやる強いリーダーが求められる」という姿勢が、ヒトラーの人気を高めていきます。
映画撮影時には笑い事だったかもしれませんが、アメリカでトランプ人気があれほどあるのをみると、強いリーダー待望論、移民排斥を望む声は底流としてあるのでしょう。日本だとドイツは戦争を反省しているなんて見方もありますが、やはり、しょせんは同じ人間。ヒトラーも選挙で出てきたように、どこの国でも、いつ同じことを繰り返してもおかしくないわけですね。さらに、おかしいと思っても黙っている人も多くいて、それがまた事態を悪化させていきます。
また、ヒトラーの時代になかった、テレビやインターネットがいかに扇動の道具として適しているかというのも良く分かります。視聴率目当てのテレビ局幹部はヒトラーを起用しようとしますし、過激な発言も言論の自由で通してしまう。ヒトラーの動画はネットであっという間に拡散していく。
SNSでSS隊員を募ったら、オタクとかデブしか集まらなかったり、「ヒトラー最後の12日間」の総統閣下シーンのパロディがあったり、ユーモア交じりで、あまり深刻にしていないのもいい。ただ、ザヴァツキやテレビ局幹部のどたばたは、ちょっと物語のテンポをおかしくしているような気もしましたが。それでも、シニカルなラストも含めて、今だからこそ見ておくべき作品でしょうね。
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