作品情報 2016年日本映画 監督:白石和彌 出演:綾野剛、YOUNG DAIS、中村獅童 上映時間:135分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズ川崎 2016年劇場鑑賞138本目
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【ストーリー】
柔道が強くて北海道警にスカウトされた諸星要一(綾野剛)。公共の安全を守り、市民を犯罪から守るため、まじめに職務を遂行するが、うまくいかないことばかり。しかし、班長の村井(ピエール瀧)から、刑事は点数をかせがないとだめで、そのためには裏社会に自分の情報提供者Sを作ることだとアドバイスされる。
地元ヤクザの幹部、黒岩(中村獅童)、麻薬の密売人太郎(YOUNG DAIS)らをSにして、諸星は暴力団関係に食い込み、違法捜査スレスレの手法で次々と事件を解決し、道警のエースとまでいわれるようになるのだが…
【感想】
まじめな警察官が、どんどんワルにそまりながら活躍する。でも、組織の腐敗もあって、栄光から一気に転落する。そんな王道的な話が実際にあったのだから、不思議でしょうがありません。暴対法施行前は警察は暴力団とナアナアの関係にありました。点数稼ぎのためには、犯人ではないと分かっている鉄砲玉を納得ずくで逮捕したり、拳銃を暴力団から購入して、警察が押収したようにみせかけたり。
諸星がワルになりながらも、道警のエースに上り詰めていくシークエンスは、軽快でいけないことだとわかりながらも、見ていてワクワクしました。Hなシーンや、本人達はまじめでも、観客からみればギャグみたいなこともたくさんあり、エンタメとしても見応えがあります。
諸星とSたちの関係は一種の家族といえます。映画では諸星の家族はでてきませんが、ホステスや婦警など愛人を渡りあるくものの、本当に愛する家族ではありません。だから、裏切りが分かれば死の危険もあるSたちとのなかは、本当の家族以上に家族的な関係でした。
しかし、うまくいっていたはずの諸星の人生も、あることから狂い始めます。冷酷な組織は末端である諸星を切り捨て、でも、上司は栄転します。家族だったSたちとの関係もどんどんおかしくなります。映画では背景的にしかいわれていませんが、実際の北海道警は捜査費を幹部の飲み食いに使っており、本当の捜査にあてられるお金はごくわずかでした。諸星が自腹をきってどんどん貧しくなり、ついには犯罪に手を染めるのも、幹部の捜査費横領が原因だったといえます。警察に逮捕された諸星が、それでも、警察組織を信じてかばう供述をして、自分はまた職務に復帰できると思い込んでいたというのも怖い。
こうした構図は恐らくどのサラリーマンでも思い当たる節があるでしょう。ちなみに、映画の公開にあわせたように、本物の北海道警薬物銃器対策課で情報提供者との癒着で捜査員が逮捕されてます。映画の舞台は15年ぐらい前ですが、今もその体質は変わっていない。
綾野剛の演技はすごいの一言。純粋な新人警官のころから、エースとして傍若無人の様子、そして、転落した後の悲惨なすがた。同時期公開の「64」では、まじめな警察官を演じているのも味わい深い。そのほか、脇は劇団出身者など無名だけど演技派で固めています。白石和彌監督は「凶悪」と違ったかたちの犯罪映画。次作も楽しみです。
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