2016年07月09日

葛城事件

 子供が通り魔になった親の苦悩と、何がいけなかったのか丹念に追った作品。某アメリカ映画でも近年公開されたので同じテーマを扱っていますが、こちらのほうが、日本の風土もあってか、はるかにねちっこく、暗い話でした。三浦友和がすさまじい。

 作品情報 2016年日本映画 監督:赤堀雅秋 出演:三浦友和、南果歩、若葉竜也 上映時間:120分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ川崎 2016年劇場鑑賞141本目



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 【ストーリー】
 親から引き継いだ金物屋を営む清(三浦友和)。郊外の一軒家で、貞淑な妻・伸子(南果歩)、幼い頃から成績が良くエリートサラリーマンになった長男の保(新井浩文)、やさしいの次男・稔(若葉竜也)の平凡な4人家族だ。 
 
 だが、家庭は徐々に壊れていく。独断的ですぐ手が出る清に逆らえない伸子、リストラされたことを妻(内田慈)にも父にもいえない保。そして、ニートを続ける稔。そして、とうとう稔が通り魔事件を起こして死刑判決が下る。そこへ、死刑制度反対の運動家という順子(田中麗奈)が、稔と結婚すると現れた。

 【感想】
 一見、幸せそうにみえる一家ですが、全員がどこか狂っている。さらに、稔に愛を伝えることで、命の重みをしってほしいという訳の分からない理屈をいう順子も加わると、家族が凶器であったとも言える重たい話です。

 清は今の基準では多少荒っぽいですが、昭和のオヤジにこの手の人はいたわけだし、そういう家族の人がみんな犯罪者になるわけではない。ただ、ストッパーになるべき人はいなかった葛城家はつらかった。一家の非常識な行動の数々、自分の劣等感からか非常識な行動で店員など弱者を怒鳴ってばかりの父、次男を溺愛しすぎておかしくなってしまう妻、父に逆らえない長男などなど、いずれも一つ一つみればリアルなのが怖いです。

 個人的にはマイホームへの執着が行けないと思っています。一家の主はマイホームをかって、家族を養う。そういう昭和的発想は今の時代から遅れています。清の金物屋が、特に工夫もせずに、商店街のさびれた店になっていくのと同様、時代に取り残された家長が家族に八つ当たりする。これも、余裕のある時代だったらよかったけど、今のような時代はいつ、レールから落ちるか、そして、暴発するのか、自分の身に置き換えても恐ろしい。見終わった後に鬱になります。

 また、稔の通り魔シーンは、BGMも配して、地下街の静粛の中で、ピンポーンという地下街に流れる音と、悲鳴だけが聞こえるというのも怖かった。「ディストラクション・ベイビーズ」のような高揚感もなく、ひたすら地味なだけに恐ろしい。その一連の犯行を目撃するサラリーマンの目線にしているというのは、うまい手法で、赤堀監督恐るべし。

 役者はみな素晴らしいの一言。三浦友和の時代に取り残された焦燥や、自分は家族のことを愛していたのに、みんなはそうは思っていなかったというやりきれなさ、そして、ラストでの思いも寄らない行動。新井と若葉の好対照のようでいながらも、父親の抑圧のため、徐々に狂っていく子供たちの演技。南、田中の女性だからこその自分の狭い視野に閉じこもった狂気。脇役に至るまで、演技は堪能できました。

 ただ、先ほども書きましたけど、似たような家族は結構まだあるでしょうし、それなのに、なぜ通り魔が起きたかというと、やはり稔の資質もあるわけで、その部分は描ききれなかった気もします。
posted by 映画好きパパ at 07:52 | Comment(0) | TrackBack(6) | 2016年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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