2016年07月13日

ブルックリン

 20世紀半ばのニューヨークを舞台に、アイルランド移民の若い女性の青春を描いた佳作。前半は丁寧に心情をすくっていたのだけど、後半は若干はしょりすぎの感じもありました。
 
 作品情報 2015年アイルランド・イギリス・カナダ映画 監督:ジョン・クローリー 出演:シアーシャ・ローナン、ドーナル・グリーソン、エモリー・コーエン 上映時間:112分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズ川崎 2016年劇場鑑賞145本目



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 【ストーリー】
 1950年代、アイルランドの田舎町で姉ローズ(フィオナ・グラスコット)と母メアリー(ジェーン・ブレナン)と3人で暮らすエイリッシュ(シアーシャ・ローナン)。聡明なのに働き口がなく、小さな商店でこきつかわれていたのを見かねて、ローズがニューヨークにいるフラッド神父(ジム・ブロードベント)に口添えしてくれ、エイリッシュはアメリカに渡ることになった。

 大都市での厳しい生活にホームシックにかかるエイリッシュ。だが、フラッド神父や同じアイルランド人女性を集めた下宿のキーオ夫人(ジュリー・ウォルターズ)の支えに加え、優しいトニー(エモリー・コーエン)というボーイ・フレンドができ、アメリカでの生活は徐々にうまくいっていく。だが、故郷から悲報が届き…

 【感想】
 原作本は未読ですが、映画は前半は丹念にエイリッシュの心情を描いていたのに、後半はやや駆け足で、もう少し彼女の心の動きをおってみたかった気もしました。

 故郷を遠く離れて、やってきた大都会。精一杯おしゃれをしても、同世代の女子からはださいと思われ、仕事もアップアップ。つらい日々が続きます。彼女の転機となったのは、教会でのボランティアでした。アイルランド出身で今は貧しい生活をしている高齢者を支える仕事。これは日本の高度成長にもいえますが、ニューヨークの発展を肉体労働で支えた彼らが、年とともに見捨てられていく。その同郷人たちの故郷を思う歌がエイリッシュの心によりそいます。アイルランドの色である緑のファッションを彼女が身につけているのも、心はまだ故郷とつながっている現れでしょう。

 同時に、トニーをはじめとする新しい出会い。マザコンでも野球狂でもない珍しいイタリア人(笑)との異文化交流。スパゲッティの食べ方を特訓するシーンはほほ笑ましくもあり、当時のアメリカの様子が下宿仲間も最初は意地悪かと思いきや、恋やファッションばかりの軽い女性達で、エイリッシュも徐々に付き合い方を学びます。移民の国アメリカは、自分がなじもうとすれば、周囲も応えていきます。単にデパートの売り子で終わらず、夜間大学に進む彼女の努力にちゃんと応えてくれました。

 しかし、悲報をうけてアイルランドに戻ってから、彼女の気持ちがよく分からなくなります。アイルランドで出会ったジム(ドーナル・グリーソン)という青年にどんどん惹かれていきますが、その心理がよく分からない。結局、ニューヨークでのできごとは夢にすぎず、故郷にこそ本当の自分があるということなのでしょうか。ラストは納得できますが、やはりこのへんの心の揺れ動きを丁寧に見たかったですね。

 シアーシャ・ローナンはじめアイルランド出身の俳優をそろえており、彼女も故郷への思いがあったのでしょう。エイリッシュに成り切る好演で、オスカーノミネートも納得のできでした。売り出し中のドーナル・グリーソンが、もうちょっと目立てば良かったのにという気もしましたが、それ以外は文句なしの配役です。また、アイルランドの美しい自然や、半世紀前のニューヨークの雰囲気、ファッションなど美術面も満足できる作品です。
posted by 映画好きパパ at 06:45 | Comment(0) | TrackBack(14) | 2016年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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