2016年07月31日

シング・ストリート 未来へのうた

 「ONCE ダブリンの街角で」などい、切ない青春音楽映画というジャンルを切り開いたジョン・カーニー監督の新作。80年代のアイルランドを舞台に、どうしようもない現実に翻弄されながらも、音楽と恋に必死な高校生の心境を救い上げた佳作です。

 作品情報 2015年アイルランド、イギリス、アメリカ映画 監督:ジョン・カーニー 出演:フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、ルーシー・ボーイントン、ジャック・レイナー 上映時間:106分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2016年劇場鑑賞163本目



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 【ストーリー】
 1980年代、大不況のアイルランド。高校生のコナー(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)は父親(エイダン・ギレン)が失業し、学費が安い底辺高校に強制的に転校させられる。荒っぽい高校でコナーはさっそくいじめの標的に。

 家庭でも不仲な両親は離婚寸前。学校にもなじめなかったが、モデル志望の女性ラフィーナ(ルーシー・ボーイントン)と知り合い、自分はバンドを組んでいて、そのミュージックビデオ(MV)に出演しないかといったことから、バンドを結成する羽目に。学校の落ちこぼれ仲間を集め、ロックオタクで引きこもりの兄ブレンダン(ジャック・レイナー)のアドバイスを受けながら、音楽の道にひかれていく。

 【感想】
 洋楽は詳しくなく、デュラン・デュラン、フィル・コリンズの名前ぐらいしか分からなかったのだけど、名曲の数々や、オリジナルでも、当時の雰囲気満載のナンバーが続き、当時の音楽ファンだったらたまらないでしょうね。それはさておき、町は不況、学校ではいじめ、家庭は崩壊寸前のコナーだけど、決してくじけず、音楽とあこがれのラフィーナのために、青春を打ち込んでいきます。

 バンドメンバーも落ちこぼれで、イジメの対象になっていたり、親が矯正施設に入っていたり、アル中だったりしますが、音楽という打ち込めるものが、彼らを救ってくれるというストーリーはシンプルだけどとてもいい。バンド結成のどたばたをユーモラスに描きながらも、コナーとラフィーナという軸はぶれずに描いていく王道さも心地よい作品です。

 また、青春映画としては貴重なのだけど、家族の崩壊がコナーやブレンダンに降りかかっているというのもリアルさをましています。高校生になって親はうざったい存在だけど、それでも大好きだから、喧嘩したり、まして離婚はしてほしくない。階下で聞こえる両親の怒鳴りあいを、兄弟達がレコードを大音量にして耳を背けるシーンは、みていていたましくなりました。

 さらに、ブレンダンの兄としての立ち位置もいい。内心、鬱屈したものはあるけれど、弟のことを愛していて、年長者としてリードしていく。終盤、ブレンダンの感情が爆発したときは、ああ、ここまで理想の兄を演じるのは大変だったんだろうと、つくづく同情しました。ジャック・レイナーは最近売り出し中のことだけあり、存在感が光ります。

 こうした何もかもくすぶった現状から救ってくれるのが音楽。後半のライブの場面は、バック・トゥ・ザ・フューチャーへのリスペクトもありますが、人生の美しさと切なさを同時に感じさせられて、涙が出そうになりました。人生は嫌なことばかりだけど、捨てたものでもないというテーマが伝わってきます。

 もう一つ、映画のセリフでは「ロックン・ロール イズ リスク」ですが、人生もリスクであり、過去のノスタルジーにひたるのは中高年になってから。若者はどんなに波が立ちはだかっても、前に進めという力強いメッセージも感じられます。実際、高齢者への統計では何かで失敗したことよりも、何かをしなかったことに対する後悔のほうが強いのですよね。愛と音楽があれば、何もかも失うかもしれないけど、前進しようという力強さ、まさに青春の醍醐味を味わえる作品でした。

 また、「ブルックリン」もアイルランドが舞台ですが、そこから30年たっても、故郷に対するかっとうは変わらないのかと、しみじみさせられます。

posted by 映画好きパパ at 06:50 | Comment(0) | TrackBack(11) | 2016年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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