シン・ゴジラ

　とにかくすごい、ここ何年かの邦画大作で最高傑作ともいえる作品。ただし、日本政府対ゴジラという点に集中しており、個人が描かれていないのっぺり感と、政治家、官僚への作り手側の信頼が、現在の保守的な風潮と妙にマッチしているのが、何となく怖く感じられました。映画を楽しみたければ事前情報はできるだけ得ないで、映画館に直行しましょう。

　作品情報　2016年日本映画　総監督：庵野秀明　出演：長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ　上映時間：120分　評価★★★★★（五段階）　観賞場所：ＴＯＨＯシネマズ渋谷　2016年劇場鑑賞164本目



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　【ストーリー】
　東京湾・羽田沖で、大事故が発生。緊急会議を開いた政府は原因究明に紛糾するが、内閣官房副長官・矢口蘭堂（長谷川博己）は、未知の巨大生物が現れたのではないかと危惧し、先輩の赤坂（竹野内豊）からたしなめられる。

　やがて、巨大生物は多摩川を遡上するが、前例のない事態に政府は混乱するばかり。矢口は各省庁からやり手を集めた対策チームを発足させる。一方、アメリカ政府の特使、カヨコ・アン・パタースン（石原さとみ）は、「ゴジラ」という名前の巨大生物で、米国政府がひそかに対策を講じていたことを矢口に告げる。

　【感想】
　ゴジラ＝ちゃちな怪獣映画で、日本の特撮作品はチープなもの。そんな印象をもっていたし、「進撃の巨人」のがっかりぶりからして、それほど期待はしていなかったのですが、実際にみて驚愕のひとこと。天災のようにあらわれ、人智を超えた能力をもつゴジラになすすべがない人々と、それでも最善の手をうとうとする日本政府の担当者たちの姿をリアルにシュミレートして作られています。ハリウッドも含めたすべてのＳＦアクションで、ここまで実際に起きた場合にどうするかを再現した作品はないのでは。

　個人的にはＬアラートとか、「00000JAPAN」とか、最新の災害対策のシステムが劇中に、ほんのわずかな台詞なり、劇中テレビの字幕だったりででている作り込みの細かさに驚きました。実際の法律の条文などの議論もでています。まあ、政治家、官僚が人間側の主人公なので、法治国家として当然なのでしょうけど、こういう作品はみたことがない。

　出てくる政治家、官僚たちは文字通り身命を削ってゴジラ対策にあたります。環境省、文科省といった役所の官僚が優れたアイデアをだすというのを、日本の官僚システムのすごさを実感させるとともに、官僚バンザイが過ぎる印象もうけます。また、3.11の福島原発事故の政府の対応のまずさを反映しているふうにもみられますが、現在の法的、社会的システムの限界をストレートにぶちまけています。結局、安保法制とか緊急事態条項とかは必要なんだよ、と現実から目を背けがちなリベラルへ、SF映画が痛烈な問いを突きつけている気もしました。

　ただ、主人公の矢口ですら、日本を思う熱情はみせますが、人間としてどうなのかがわからない。家族はいるのか、出身はどこなのかといったものはまるでなく、組織のなかの一員でしかない。もっといえば、キャリア官僚ばかりが活躍し、民間人や現場で対応する人たちは蚊帳の外といっていいでしょう。対策室の官僚が課長以上というのは、かなり違和感を感じました。

　初代ゴジラで印象に残っているのは、「疎開は嫌だな」と電車の中で世間話をする会社員とか、夫を戦争で失い「お父ちゃんのところにいくのよ」と母子が抱き合って、ゴジラに焼かれる家族とか、庶民の何気ないセリフ、感情が物語りの奥行きを深くしていきました。しかし、本作では、避難している人のショットは随所でさしこまれるけど、たんに、避難対象というモノでしかありません。ほんの二言三言の会話でいいから、その人たちがどういう人なのかという部分があれば、戦後史に残る最高傑作になったろうに。一般人が犠牲になるシーンも直接的にありませんが、これも初代ゴジラとの大きな差でしょうか。

　さて、最初に登場するゴジラは、ちゃちな外見でむしろ気持ち悪いのだけど、全編を通じて考えると、むしろほっとさせてくれたかもしれません。また、ハリウッドのＳＦＸに比べてちゃちという意見も散見されますが、映画の基本はストーリーであるうえ、何度も見慣れた東京の町並みが破壊されていく様子は、恐怖すら感じてしまい、なまじＳＦＸの技術だけあげているハリウッド大作にくらべたら、作品全体としてみたらはるかにレベルの高い作品です。映画ファンなら、ぜひとも大画面でみるべき作品でしょう。

　長谷川、竹野内、石原が前面にでていますが、官僚役の市川実日子と高橋一生がいい味をだしていたほか、斎藤工とか前田敦子とかワンシーンだけど、いろんな役者がでていて、見つけるのも楽しみでした。

Comments

初めまして。
私日本テレビで番組制作をしております��津と申します。
この度は取材というよりは、映画の１シーンを探していまして…
そのシーンがある洋画(ホラー・サスペンス・アニメなし)を教えていただけたらと思いご連絡させていただきました。

その１シーンというのが、「ダストシュートから脱出する」シーンです。
「グランド・イリュージョン」のように、一連の流れがわかるものを探しています。
ちゃんと入口に入るカットがあり、ダストシュートを下るカットもあり…
該当する映画あればいくつか教えていただけたらと思い、ご連絡しました。

ちなみに…
・グランドイリュージョン
・９デイズ
・スターウォーズ
・アサシン
・ザロック

など観ましたが、探しているものと違い…
海外ドラマでも大丈夫ですので、思いついたものあればお願いします。

お忙しい中でお手数をおかけしますが、ご確認していただけたら幸いです。

��津

Posted by 高津 at 2016年08月02日 13:57

思いつきですが
・チャーリーとチョコレート工場
・ファン・ボーイズ
・WALL・E／ウォーリー
ダストシュートを昇って脱出ですが
・パディントン

Posted by 映画好きパパ at 2016年08月02日 14:53