2016年08月04日

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男

 「ローマの休日」など数々の名作を書きながら、赤狩りの犠牲となり、名前を隠して活動した脚本家ダルトン・トランボの伝記映画。彼の不屈の精神とそれを支えた家族を格調高く描いた傑作。表現に不寛容になっている今だからこそ、多くの人に観てもらいたい作品です。

 作品情報 2015年アメリカ映画 監督:ジェイ・ローチ 出演:ブライアン・クランストン、ダイアン・レイン、ヘレン・ミレン 上映時間:124分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズシャンテ 2016年劇場鑑賞166本目



ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村

 【ストーリー】
 第二次大戦後、米ソ冷戦が始まり、ハリウッドでも共産党関係者と疑われた人間はブラックリストにのった。売れっ子脚本家のダルトン・トランボ(ブライアン・クランストン)は、議会で仲間の名前を証言することを拒み、刑務所に入れられる。

 出所後、彼を雇う映画会社はどこにもなかったが、名前を隠して「ローマの休日」などの名作を書き続ける。さらに三流映画会社の社長キング(ジョン・グッドマン)から、名前を出さないかわりに、作品を量産するという契約をとりつける。だが、仕事に追われて、彼を支えてくれた妻クレオ(ダイアン・レイン)や長女ニコル(エル・ファニング)をもないがしろにして、家庭の危機に。一方、ハリウッドで隠然たる権力をもち、赤狩りを勧めているコラムニストのヘッダ(ヘレン・ミレン)は、トランボをつぶそうと策略を練る。

 【感想】
 赤狩りの映画はいくつか観たことがありますが、その中心人物のトランボの伝記映画ははじめて。アメリカ中が狂乱するなか、自分の知性とユーモアで乗り切った彼の不屈の精神はとにかく見事です。しかし、彼を単に英雄と描くのではなく、自分自身の焦りといらだちを家族にぶつける弱さや、友人との決裂などもきっちり描きます。それでも、自分の弱点を素直に認める彼の誠実なところが、最後には報われます。

 しかし、実際に世の中が一方的になったときに、果たして僕自身はどこまで耐えられるのか。劇中、トランボの親友だった俳優のエドワード・G・ロビンソン(マイケル・スタールバーグ)が圧力に耐えかねて、トランボたちのことを議会で証言するシーンがでますが、おそらく大部分の人がロビンソンのことを責められないでしょう。しかし、トランボに怒る権利があることも事実。

 ヘッダやジョン・ウェイン(デヴィッド・ジェームズ・エリオット)、作中の記録映画にしかでてこないけど、ロナルド・レーガンといった連中が、仲間をつるし上げる様子はみるにたえない薄汚さ。特に、従軍経験のないジョン・ウェインが沖縄に従軍したトランボからやりこめられるシーンは、現在でも、トランプ氏やブッシュ前大統領など強いことを言う人ほど戦場経験がないというのに通じて、やりきれなくなります。レーガンは大統領まで上り詰めたのだから、人間性が嫌でも出世するというのは世の常かもしれません。

 その一方で、粗暴だけど赤狩りの手先を追っ払うキング社長や、スターの座を脅かされても、トランボを「スパルタカス」の脚本家として雇うカーク・ダグラス(ディーン・オゴーマン)といった、わずかですが勇気ある人々の存在が観ているこちらをほっとさせてくれます。何より、家族のきずなが人間が逆境にあるときにいかに大切かということも教えてくれます。

 ブライアン・クランストンはオスカーを逃したのが不思議なほどの名演です。まあ、レオナルド・ディカプリオに受賞させたい年だからでしょうけど、もったいない。なにより、監督がオースティン・パワーズシリーズのジェイ・ローチというのもびっくり。いつのまにか、こういう社会派をとるようになったんでしょうか。

posted by 映画好きパパ at 07:44 | Comment(0) | TrackBack(9) | 2016年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 (試写会)
Excerpt: 赤狩り時代の脚本家 公式サイト http://trumbo-movie.jp7月22日公開 原作: トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 (ブルース・クック著/世界文化社)監督: ジェイ・ローチ  「..
Weblog: 風に吹かれて
Tracked: 2016-08-04 09:19

『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男(Trumbo)』ジェイ・ローチ監督、ブライアン・クランストン、ダイアン・レイン、ヘレン・ミレン、ジョン・グッドマン、他
Excerpt: 注・内容、台詞に触れています。『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』Trumbo監督 : ジェイ・ローチ脚本・製作 : ジョン・マクナマラ出演 : ブライアン・クランストンダイアン・レイン、ヘレン・..
Weblog: 映画雑記・COLOR of CINEMA
Tracked: 2016-08-04 16:52

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男・・・・・評価額1700円
Excerpt: アメリカは、彼の何を恐れたのか? 1940年代から50年代にかけて全米で吹き荒れた、いわゆる“赤狩り”に抵抗し、社会から抹殺された名脚本家・ダルトン・トランボが、長きに渡る闘争の末に、“奪われた..
Weblog: ノラネコの呑んで観るシネマ
Tracked: 2016-08-06 16:49

「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」
Excerpt: 2015年・アメリカ/ShivHans Pictures、Groundswell Productions他配給:東北新社 原題:Trumbo 監督:ジェイ・ローチ原作:ブルース・クック脚本:ジョン・マ..
Weblog: お楽しみはココからだ〜 映画をもっと楽しむ方法
Tracked: 2016-08-06 22:44

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男★★★★
Excerpt: 1940年代から50年代にかけてアメリカで猛威をふるった赤狩りによってハリウッドを追われながらも、偽名で活動を続け、「ローマの休日」など数々の名作を世に残した不屈の脚本家ダルトン・トランボの苦難と復活..
Weblog: パピとママ映画のblog
Tracked: 2016-08-23 12:07

トランボ ハリウッドで最も嫌われた男
Excerpt:  『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』を日比谷のTOHOシネマズシャンテで見ました。 (1)映画『ヘイル、シーザー!』を映画評論家の町山智浩氏が解説している記事において、同氏が「この映画はね、奥..
Weblog: 映画的・絵画的・音楽的
Tracked: 2016-08-23 21:12

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男/TRUMBO
Excerpt: 不朽の名作「ローマの休日」(53)の本編にクレジットされなかった真の脚本家、 ダルトン・トランボの苦難と復活の軌跡を映画化した実録ドラマ。 大好きなコメディ「オースティン・パワーズ」「..
Weblog: 我想一個人映画美的女人blog
Tracked: 2016-08-24 10:14

映画「トランボ」
Excerpt: 映画「トランボ」の感想です.多くの人に勇気を与える優れた映画です.上映館が少ないのが残念.佐賀は「シエマ」のみ.たくさんの人に見てほしいと思います. 応援のクリック歓迎 50年代にアメリカに吹き荒..
Weblog: ペガサス・ブログ版
Tracked: 2016-08-31 18:47

「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」 Trumbo (2015 東北新社)
Excerpt: ダルトン・トランボといえば、わたしの世代にとっては「ジョニーは戦場へ行った」の監督(原作と脚本も)。戦場で負傷し、目も見えず、口もきけず、聴覚も失ったジョニーは、壊死をふせぐために両手両足をも切断..
Weblog: 事務職員へのこの1冊
Tracked: 2016-11-07 20:44