作品情報 2015年アメリカ映画 監督:ジェイ・ローチ 出演:ブライアン・クランストン、ダイアン・レイン、ヘレン・ミレン 上映時間:124分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズシャンテ 2016年劇場鑑賞166本目
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【ストーリー】
第二次大戦後、米ソ冷戦が始まり、ハリウッドでも共産党関係者と疑われた人間はブラックリストにのった。売れっ子脚本家のダルトン・トランボ(ブライアン・クランストン)は、議会で仲間の名前を証言することを拒み、刑務所に入れられる。
出所後、彼を雇う映画会社はどこにもなかったが、名前を隠して「ローマの休日」などの名作を書き続ける。さらに三流映画会社の社長キング(ジョン・グッドマン)から、名前を出さないかわりに、作品を量産するという契約をとりつける。だが、仕事に追われて、彼を支えてくれた妻クレオ(ダイアン・レイン)や長女ニコル(エル・ファニング)をもないがしろにして、家庭の危機に。一方、ハリウッドで隠然たる権力をもち、赤狩りを勧めているコラムニストのヘッダ(ヘレン・ミレン)は、トランボをつぶそうと策略を練る。
【感想】
赤狩りの映画はいくつか観たことがありますが、その中心人物のトランボの伝記映画ははじめて。アメリカ中が狂乱するなか、自分の知性とユーモアで乗り切った彼の不屈の精神はとにかく見事です。しかし、彼を単に英雄と描くのではなく、自分自身の焦りといらだちを家族にぶつける弱さや、友人との決裂などもきっちり描きます。それでも、自分の弱点を素直に認める彼の誠実なところが、最後には報われます。
しかし、実際に世の中が一方的になったときに、果たして僕自身はどこまで耐えられるのか。劇中、トランボの親友だった俳優のエドワード・G・ロビンソン(マイケル・スタールバーグ)が圧力に耐えかねて、トランボたちのことを議会で証言するシーンがでますが、おそらく大部分の人がロビンソンのことを責められないでしょう。しかし、トランボに怒る権利があることも事実。
ヘッダやジョン・ウェイン(デヴィッド・ジェームズ・エリオット)、作中の記録映画にしかでてこないけど、ロナルド・レーガンといった連中が、仲間をつるし上げる様子はみるにたえない薄汚さ。特に、従軍経験のないジョン・ウェインが沖縄に従軍したトランボからやりこめられるシーンは、現在でも、トランプ氏やブッシュ前大統領など強いことを言う人ほど戦場経験がないというのに通じて、やりきれなくなります。レーガンは大統領まで上り詰めたのだから、人間性が嫌でも出世するというのは世の常かもしれません。
その一方で、粗暴だけど赤狩りの手先を追っ払うキング社長や、スターの座を脅かされても、トランボを「スパルタカス」の脚本家として雇うカーク・ダグラス(ディーン・オゴーマン)といった、わずかですが勇気ある人々の存在が観ているこちらをほっとさせてくれます。何より、家族のきずなが人間が逆境にあるときにいかに大切かということも教えてくれます。
ブライアン・クランストンはオスカーを逃したのが不思議なほどの名演です。まあ、レオナルド・ディカプリオに受賞させたい年だからでしょうけど、もったいない。なにより、監督がオースティン・パワーズシリーズのジェイ・ローチというのもびっくり。いつのまにか、こういう社会派をとるようになったんでしょうか。
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