作品情報 2014年フランス映画 監督:マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール 出演:アリアンヌ・アスカリッド、アハメッド・ドゥラメ、ノエミー・メルラン 上映時間:105分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2016年劇場鑑賞172本目
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【ストーリー】
パリ郊外のレオン・ブルーム高校は貧しい移民が通う公立校で、授業も荒れていた。1年の落ちこぼれクラスの担任になったベテランの歴史教師ゲゲン(アリアンヌ・アスカリッド)は、懸命の指導をするが、生徒達にはなかなか届かない。
そこで、ゲゲンはユダヤ人虐殺をテーマにした、全国高校生歴史コンクールへの参加を提案する。はじめは知識も興味もなかった生徒達だが、幼い子供たちが犠牲になったことや、アウシュビッツの生き残りの老人の聞き取りなどを通じて、歴史の重みに関心を持ち始める。
【感想】
フランスにおけるユダヤ人虐殺というのは微妙な問題で、ナチスドイツが主導したとはいえ、フランス国内のユダヤ人を収容所に送ったのはフランス政府でした。パリにはホロコースト記念館もあるとはいえ、若い世代にそのことを伝えるのが難しいことは洋の東西を問わず一緒です。
けれども、「アンネの日記」のアンネをはじめ、同世代やもっと年端のいかない子供たちがなぜ犠牲になったのか。感受性の強い高校生達にとって、調べれば調べるほど自分の身に置き換えて考えることができました。さらに、もはや数少ない収容所の生き残りの男性に直接話しをきけたのも大きい。ゲゲンもヒントはだすものの、どのようなテーマを取り上げるかは生徒達の自主性に任せます。この適切な指導で、荒れていたクラスが一致団結していく様子はみものです。
また、冒頭、スカーフをかぶったイスラム教徒の生徒を追い出す教師や、バスのなかでイスラム教徒の子供に席を譲られても無視する白人老女の姿などが差し込まれます。ホロコーストまでいかなくても、自由平等博愛のフランスなのに、人種差別や偏見がまだまだ残っていることが告発されます。
日本でも戦後71年たって、当時の記憶がどんどん風化されています。伝えなければいけないことを伝えておかないと、歴史も記憶も都合の良いように変わってしまう危険があります。本作は、実際に授業を受けたアハメッド・ドゥラメが、自分の体験をマリー=カスティーユ・マンシヨン=シャールにメールで送ったのが制作のきっかけ。ドゥラメは生徒役でも出演しています。1993年生まれのドゥラメが、こうして歴史を伝えるのに大きな役割を果たしたのは立派だし、まだまだ、若い世代にもできることはあると実感しました。
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