作品情報 2015年ブラジル映画 監督:セルジオ・マシャード 出演:ラザロ・ハーモス、カイケ・ジェズース、エウジオ・ヴィエイラ 上映時間:103分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2016年劇場鑑賞174本目
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【ストーリー】
幼い頃は神童と呼ばれたものの、プレッシャーに弱くて、オーケストラのオーディションを落ちたバイオリニストのラエルチ(ラザロ・ハーモス)は、家賃も払えなくなり、知り合いに紹介されたサンパウロのスラム街の子供のためのバイオリン教室の講師になる。
だが、子供たちは楽器演奏どころか、その日を生き延びるのもやっとの過酷な生活をしていた。最初は渋々だったラエルチも、子供たちに音楽を教えようという熱意が徐々にわいてくる。中でもサムエル(カイケ・ジェズース)という少年は、ラエルチも驚くほどの才能をもっていた。しかし、貧しいため父親からはバイオリンをする暇があったら働くようにいわれ、また、親友のVR(エウジオ・ヴィエイラ)がギャングと起こしたトラブルに巻き込まれてしまう。
【感想】
サンパウロのスラム街には実際に音楽を通じて子供たちを貧困や犯罪から救おうとするNPOがあり、エリオポリス交響楽団というオーケストラを創設しています。ラエルチは架空の人物ですが、子供たちがオーケストラに参加するというのは、実際に行われています。
子供たちにはそれぞれ多様な背景があります。しかし、本作はサムエルとVRに絞って、その他の子供はカットバックのように、背景で家庭の事情を観客に想像させるという方法で、作品のテンポを良くしました。連続ドラマで見たかった気もしますけど、クライマックスの演奏シーンに至るまで、効果的にみせていると思います。
同時に、貧富の差が激しく、ギャングが生活のなかで当たり前のように大きな顔をしているブラジルの現状も垣間見られます。オーケストラの大ホールはぴかぴかの衣装を着た紳士淑女達、また、ギャングのボスのパーティも、彼らがもうけた金をどう使っているのかわかります。一方で、スラムの子供たちのシンプルなそろいのシャツや、普段着のままの観客たち、ステージの粗末さをみると落差に愕然とします。もっとも、子供たちの演奏はみるみるうまくなり、実際にエリオポリス交響楽団が演奏しているそうですから、聞いているこちらにも感動的な音色が流れてきます。
クラシックだけでなく、ブラジルのヒップホップも効果的に使われています。クラシック一筋だったラエルチがクラブにいって、ヒップホップを楽しそうにかつパワフルに踊る子供たちをみて目を白黒させるというのは、今のブラジルのミュージックシーンをあらわしていそう。エンディングロールに流れるヒップホップは、エリオポリス交響楽団がアレンジしたもので、クラシックとヒップホップの融合といったらオーバーですが、若い世代が求める音楽がどのようなものか感じられました。
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