作品情報 2015年日本映画 監督:卜部敦史 出演:根岸季衣、山崎満、入江崇史 上映時間93分 評価★★★★(五段階) 試写
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【ストーリー】
福祉施設の介護職員ヨウコ(根岸季衣)は、長年あっていなかった父親のシゲユキ(山崎満)が刑務所を出所するとの連絡を受ける。だが、高齢のシゲユキは寝たきりで介護が必要な状況だった。
親戚にも協力を断られ、独り暮らしのヨウコは、父を在宅で介護することを決める。だが、それは終わりのない、悪夢のような日の始まりだった。
【感想】
上映時間の9割は、自宅でのシーンです。朝起きたヨウコは、仕事に行く前に寝たきりのシゲユキの床ずれ防止のために動かし、おむつをかえて汚物を処理します。帰宅後はどんなに疲れていてもシゲユキに食事を与えなければならず、それも、スプーンで口に運んで食べさせなければならない。
これだけのシーンを何度も繰り返している内に、次第にヨウコの生活が荒れていることが画面の背景で分かってきます。自炊はやめ、コンビニ弁当に。片付けもしなくなり、部屋はゴミ屋敷のよう。介護がスタートした当初は丁寧にやっていたおむつがえも、乱暴になっていきます。介護のプロであり、職場では頼られている様子もあるヨウコですら、こうなんだから、素人が在宅介護をすることがいかに大変か、想像がつきます。
シゲユキはしゃべることができないため、ヨウコのセリフもほとんどありません。ただ、やつれていく表情がとにかくリアル。子育ての場合、子供が育っていく喜びや、あと何年で終わるかがわかりますが、介護はいったいいつまで続くか分からないのです。しかも、基本的には悪くなる一方です。
もっと親戚や近所を頼ればいいのにと思いましたが、シゲユキが前科者であり、周囲の好奇の目にさらされたくないというヨウコの気持ちも痛いようにわかります。そうこうしていくうちに、気分はどんどんマイナスのスパイラルに落ち込む。介護殺人が実際にあるというのも容易に理解できます。
介護経験者や介護が身近にある人と無い人では受け止め方が違うでしょう。けれども、将来、自分が介護を受ける立場になるかもしれないし、高齢化社会の日本では一人でも多くの人に見てもらい、介護とは何かを考えてほしいものです。僕自身、母の介護をしていることもあり、いろいろなことを考えさせられました。
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