2016年09月04日

後妻業の女

 孤独な高齢の資産家をたらしこんで後妻となり、遺産を奪い取る「後妻業」。黒川博行の原作小説発表後、実際に同じような事件が起き話題になりましたが、コテコテの出演者と演出のおかげで、コメディタッチで陰惨にならずにみれました。ただ、ラストも含めて脚本の練り込み不足のような気もします。

 作品情報 2016年日本映画 監督:鶴橋康夫 出演:大竹しのぶ、豊川悦司、永瀬正敏 上映時間:128分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズ川崎 2016年劇場鑑賞188本目



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 【ストーリー】
 小夜子(大竹しのぶ)は、柏木(豊川悦司)が所長を務める結婚相談所の熟年婚活パーティーで、資産のある老人を狙っては結婚し、小夜子に全財産を残す公正証書を書かせては殺害する後妻業のエースだった。

 今回も元短大教授・中瀬(津川雅彦)の後妻に強引に入り込み、小夜子に全財産を残す公正証書を書かせたあと殺害する。葬儀の日、中瀬の娘の尚子(長谷川京子)と朋美(尾野真千子)に公正証書をみせ、全財産を奪い取ろうとするが、怒った朋美は友人の弁護士・守屋(松尾諭)に相談。闇社会の探偵・本多(永瀬正敏)に小夜子の悪事を調べてもらうことに。

 【感想】
 小夜子のやっていることは極悪なんだけど、大竹と豊川があっけらかんと演じていることで、嫌悪感を抱かなくなるのが不思議。「あの世までお金を持って行けるわけないとか」、「人生の最後に良い思いをしたのだからその代金」などという小夜子の自分勝手な理屈も、まあそうやろな、と思えてしまうのです。

 そもそも、高齢女性は社交的で自分でどんどん活動していくのだけど、独り身の高齢男性、なまじ資産を持っている人は、孤独でどうしようもないわけです。「クリスマス・キャロル」でないですが、お金で必ずしも幸せは買えないのですよね。だから、高齢者達がやさしくする小夜子にころっとひっかかるのも分かる気がします。

 でも、実際に手を下しちゃうのはリスクが高いなあ。遺留分の裁判も含めて表沙汰になったら困るのは柏木たちのほうだろうし。このへんが露骨に手を下さなければ、もうちょっと面白かったのだろうけど。

 また、大阪が舞台で金と色に関する欲望がストレートにでている気がします。大竹も騙すだけでなく騙されることもあったり、年寄りばかりでなく、ホステス役の水川あさみや樋井明日香の女狐という言葉がぴったりな、いやらしさ。人間はいくつになってもあほなんだなとおもわせます。また、小夜子の息子で、ぐれてしまった博司(風間俊介)の存在も大きい。年寄りはいくらでも転がせても、自分の息子はどうしようもないというだめさ加減が、余計、小夜子を際立たせます。

 大竹の悪女役はさすがで、尾野と殴り合いしたシーンはアドリブで本気となり、カットがかかったあと尾野は泣いてしまったとか。また、豊川の小悪党役もかつてのニヒルな二枚目と全く違っていいですね。ここまで、変な中年になるとは思ってませんでした。津川、伊武雅刀、笑福亭鶴瓶と、小夜子の相手は一癖もふた癖もある俳優ばかりで、それぞれとのやりとりは見事。エグイ登場人物ばかりのなか、お人よしの長谷川のいやしも良かった。

 ただ、本多をめぐってもうちょっと脚本がこなれてほしかった。また、ラストはそこまでテンポがよかっただけに、ちょっと残念かも。もうここまで長くて、しかも芸達者な演技で飽きないので、もう5分ぐらい伸ばしても良かったかもしれません。

posted by 映画好きパパ at 07:05 | Comment(0) | TrackBack(6) | 2016年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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