君の名は。

　日本アニメ界の次代を担う新海誠監督の新作。新海監督らしい美しい美術と切ない恋物語をメジャーでも受け入れられるよう仕上げています。3.11後の日本の夏にふさわしい作品といえるでしょう。

　作品情報　2016年日本映画（アニメ）　監督：新海誠　声の出演：神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ　上映時間：106分　評価★★★★（五段階）　観賞場所：TOHOシネマズ川崎　2016年劇場鑑賞189本目　



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　【ストーリー】
　都心に住むイケメン高校生の瀧（声・神木隆之介）と、ド田舎に住む女子高生の三葉（上白石萌音）は、寝ている間に自分が入れ替わっていることに気づく。三葉は東京のイケメン高校生になり、瀧は田舎の女子高生になっていたのだ。

　はじめはとまどい、周囲から不審がられるが、ノートやスマホのメモのやりとりで、次第になじんでいくようになる。瀧はバイト先の先輩奥寺（長澤まさみ）に淡い恋心を抱いていた。入れ替わった三葉は瀧と奥寺がデートにいけるようセッティングする。だが、入れ替わりは突然起きなくなり、瀧は三葉に連絡をとろうとするが…

　【感想】
　事前の予告や前半の展開が中盤以降がらりと変わります。ネタバレせずにふれるのは難しいのだけど、3.11をかなり意識しており、ある意味「シン・ゴジラ」と対をなす作品。シン・ゴジラは組織が主人公で個人は徹底的に省かれていましたが、本作は逆に個人に焦点をあてています。

　年頃の男女が入れ替わったとき、特に男の子が女の子にいれかわったときムラムラしないのかとおじさんは無粋なことを考えますが、そこは新海作品であり、透き通るような純粋さを奥手の男女で表現します。瀧も三葉も、観客が応援しやすくなるような素直さ。そこへ大人の女性としての奥寺先輩がいるわけですから、キャラの配置は完璧です。

　入れ替わりというSF的な設定を使いつつ、すれ違いをテーマにした大昔の名作映画「君の名は」を想起させるタイトルと、これだけコミュニケーションが発達してもすれ違い、大切なことを忘れてしまう現代社会における人の心のありかたと、時代越えて流れる思いは、胸をうたれました。

　過去の新海作品の特長を引き継いでおり、万葉集のような日本古来の言霊文化は「言の葉の庭」、主題歌の力を使っているのは「秒速５センチメートル」を思い出しました。美しい田舎の様子は「星を追う子ども」ですしね。その良いとこどりをこれだけのメジャー作品でできたのが、監督の才能でしょう。東京と岐阜の山奥の緻密な景色や、地球に接近しているという巨大彗星がきらめく夜空など、まさに映像のマジックというべき新海作品の醍醐味を楽しめます。

　一方、キャラクターデザインを「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」の田中将賀が手がけており、これまでの新海作品とは違ってテイストも楽しめました。

　声優も主役２人は同じ年頃の若者だからこそ完璧にはまっていました。長澤はエンドクレジットをみるまで気づかないほど溶け込んでいましたし、脇は悠木碧や島崎信長ら、いきのいい本職で固めています。素直に、見て良かったなと思える作品です。