2016年10月13日

隻眼の虎

 1920年代の朝鮮を舞台に、山の神と恐れられた虎と一度は銃を捨てた伝説の猟師の物語。傑作「新しき世界」で濃密な男の世界を描いたパク・フンジョン監督だけに、本作も自分の逃れられない道をたどる男達の悲劇をじっくり描いています。日本軍将軍役の大杉漣も好演。

 作品情報 2015年韓国映画 監督:パク・フンジョン 出演:チェ・ミンシク、チョン・マンシク、大杉漣 上映時間:139分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ渋谷 2016年劇場鑑賞227本目



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 【ストーリー】
 1925年、日本の韓国総督府は虎の駆除を進めていた。慶尚南道長官の前園(大杉漣)は毛皮を集めるのが趣味なこともあり、智異山の神と呼ばれる巨大な虎を捕獲するよう部下に命じた。

 智異山にはチョン・マンドク(チェ・ミンシク)という伝説の猟師がいた。しかし、ある事情から猟師をやめ、男手一つで育てた息子のソク(ソン・ユビン)とひっそりと薬草取りをして暮らしていた。現地守備隊のリュ少佐(チョン・ソグォン)や、地元の猟師長で弟の敵討ちと大虎を狙うク・ギョン(チョン・マンシク)は、マンドクに協力を仰ぐが、彼は山の神を怒らせてはならないと拒絶する。実はその裏には隠された過去の悲劇があった。しかし、厳しい父親に反発したソクは、クの誘いにのって黙って虎狩りへと参加してしまう…

 【感想】
 戦前の韓国を舞台にして、日本軍も出ているのに、単なる反日映画にしなかったのがいい。むしろ大自然の脅威に対抗しようという人間たちの知恵比べと浅はかさ、そして悲劇を表している格調高い作品です。ちなみに、朝鮮総督府が虎狩りを命じたのは事実だし、虎が高額で売れるため、地元の猟師たちが乱獲したのも事実。こうしたことから1920年代に、朝鮮半島南部の虎は絶滅しています。舞台となる智異山は韓国で2番目に高い山で山岳信仰の聖地です。

 主要キャラがみんな血の通った人間であることがいい。もう、黙っていてもチェ・ミンシクだから、彼をみるだけでいいんだけど、山に対する恐れと猟師としての矜持。家族を愛しながらもコミュニケーションがうまくとれず、息子に反発されてしまう哀しい父親。こうした多面的な人間を演じきるのはさすが。

 リュ少佐にしろ、ク猟師長にしろ、日本軍に占領されているなかで、少しでも日本軍上層部に認められるような行動をしなければならない。そのためには無理して虎退治に乗り出さなければならないというあせりが良く分かります。特にクは弟を虎に殺された恨みや、地元の猟師達を食べさせなければならないというリーダーとしての責務など、さまざまな理由が彼を無理な猟に駆り立てます。

 一方、ソクも父親のことは好きだけど、16歳という将来を考えなければならない年頃。いつまでも父と山に暮らすことは、自分の将来をつぶすことになるし、好きな女の子にも良い格好をしたい。虎退治ができれば、猟師を辞めた父親よりも上にたてるし、お金も入って良い暮らしもできる。少年の焦りみたいなのもリアルに伝わってきます。前園将軍も単なる悪役ではなく、冷酷さ、狡猾さと軍人としての誇りをもっています。シン・ゴジラの総理大臣より貫禄がありました(笑)。

 何より存在感があったのはフルCGの大虎です。さすがに人間達との襲撃シーンは、ちょっと作り物感がでたけれど、人間を越えた智恵で猟師や軍人を罠に掛け襲いかかる場面はホラーよりも怖い。さらにオオカミなど朝鮮半島の野生動物もたっぷりでます。いくら猟師や軍人といえども、大自然の前ではちっぽけなものだと実感しました。東京ではヒューマントラストシネマ渋谷のミニ映画祭だけの上映ですが、もっと多くの人に見てもらいたい作品です。
posted by 映画好きパパ at 06:54 | Comment(0) | TrackBack(1) | 2016年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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『隻眼の虎』
Excerpt: 隻眼の虎 10年前の事件をきっかけに銃を捨てた伝説的猟師が、 “山の神”と恐れられる隻眼の大虎と 軍・地元猟師の戦いに巻き込まれていく... 【個人評価:★★☆ (2.5P)】 (自宅鑑賞..
Weblog: cinema-days 映画な日々
Tracked: 2017-07-16 02:24