作品情報 2016年日本映画 監督:三島有紀子 出演:本田翼、山本美月、稲垣吾郎 上映時間:119分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ川崎 2016年劇場鑑賞230本目
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【ストーリー】
女子高生の敦子(山本美月)は推薦で入った部活の剣道で失敗したため、いじめの対象になっていた。幼馴染みの文学少女、由紀(本田翼)は彼女のことを心配しつつも、なすすべはなく、自分で小説を書いていた。だが、国語教師の小倉(児嶋一哉)に盗作されてしまう。
新学期、紫織(佐藤玲)という転校生が、自分は親友の死体をみたことがあると2人に告げた。2人は人の死に夢中になり、由紀は病院、敦子は老人介護施設でボランティアを始めた。
【感想】
「因果応報、地獄に落ちろ!」。本田翼のこのセリフだけで大満足。物語のスタートはステージの上にたった少女たちが死について朗読するという演劇風で始まったため、いきなりびっくりしましたが、そのあとは女性監督らしく少女の嫌らしさをすくいとりながら、死についてあこがれるこの時期ならではの感性をみごとにうつしだしています。原作は女子高生の目線で、叙述のしゃべり方とかがカンにさわってしまい、映画の方が好みです。
思春期に死についてあこがれ、感じてみたいというのは昔からありました。しかし、今はSNSを使ったいじめなど、余計に死が身近に感じるというのもあるでしょう。本田も厳格な祖母(白川和子)からDVを受けています。この祖母の認知症の描写というのもリアルで、これもまた女性の生き様だと感じさせるのもなんか怖かった。一方、由紀の性格はゆがんでしまい、文学に逃避するメンヘル少女へ。でも、敦子という存在が幼い由紀を支えます。
しかし、高校という閉鎖環境では敦子をかばうことは自分もまたいじめの対象になってしまいます。水をぶっかけるなどありきたりの描写は一切ないですが、使用済みの生理用品をロッカーにいれるなど、女子校でしかできないような陰湿なイジメをみせるのも原作、脚本、監督ともすべて女性だからなんでしょうね。
一方、男の嫌らしさ、惨めさも同様にきっちり描写します。由紀は入院中の子供に頼まれて、離婚後連絡がとれなくなった子供の父親を探そうとします。そのときに、情報を教える代わりに、由紀の体をもてあそぼうとする中年男(菅原大吉)のゲスいこと。また、紫織は小遣いかせぎに、痴漢被害をでっちあげて、男達から金をだましとっていきます。それに反撃できない男達というのも現代人の病巣を描いているようです。
三島有紀子監督は「しあわせのパン」「繕い裁つ人」など、ハートウォーミングというか、正直、いい人ばかりで退屈な作品を手がけていただけに、これほど毒のあるものを作れるというのはうれしい誤算です。
本田、山本、佐藤といった女子高生役だけでなく、児嶋、稲垣、菅原といった中年、さらに白川、銀粉蝶といったベテランがいい具合にアンサンブルをかなでています。独特の雰囲気を楽しめるかどうかはありますが、個人的には堪能できた作品でした。
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