作品情報 2016年日本映画 監督:森義隆 出演:松山ケンイチ、東出昌大、リリー・フランキー 上映時間:124分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ川崎 2016年劇場鑑賞266本目
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【ストーリー】
1990年代、将棋界に新星が現れた。次々とタイトルを獲得していく天才・羽生善治(東出昌大)ら若い世代だ。中でも村山聖(松山ケンイチ)は「東の羽生、西の村山」「終盤は村山に聞け」など、羽生と並ぶ才能を期待されていた。師匠の森(リリー・フランキー)の後押しもあり、打倒・羽生のため上京して一人暮らしを始める。
だが、幼い頃に難病のネフローゼ症候群を患い、病気と闘いながら将棋をしていた村山に悲劇が起こる。末期がんだと診断されたのだ。文字通り命を削りながら、将棋を打ち続ける村山だったが…
【感想】
偶然、NHKのニュースで映画の紹介をしており、終盤の羽生と村山の対戦は1時間以上ノーカットで撮影が行われるほど、2人の役者が完全に棋士になりきっていました。眼鏡も羽生が実際に使っていたもので、コマも村山の遺品とか。松山はまだしも、東出はこれまで演技力はさほど評価されていなかったと思いますが、完全に羽生が憑依していたと思います。
将棋に人生のすべてをささげる一方、天才ゆえの発達障害か、対人関係が苦手で、少女マンガの愛読者ながら生身の女性と付き合ったことがなく、酒やマージャンにおぼれ、平気で本音をヅケヅケという。こういう破天荒な生き方が許容されずらい今の日本社会だけに、破滅に向かいながらも生活を変えられない村山の生き方、そして、打倒羽生と名人獲得への執念のすさまじさが実感させられます。
対戦の間に何気ない町の風景のカットが入ったり、対局後に村山と羽生がこっそり抜け出して差しで飲んで本音を語り合うなど、難病ものやスポ根ものにせず、生きることの意味まで見通した演出は良かったです。ただ、それだけにクライマックスの回想シーンはちょっと、勢いをそいだ感じでもったいなかった。
師匠役のリリー・フランキーが久々に温厚な役をやっているほか、奨励会で夢破れた後輩の江川(染谷将太)、将棋連盟の職員・樋口(筒井道隆)、ライバル棋士の荒崎(柄本時生)、橘(安田顕)といった棋界の人間も実に魅力的に書かれています。また、男くさい物語にわずかながら花を添えた新木優子も出演時間は短いけれど、物語に人間くささを加えてくれました。
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