2016年12月11日

古都

 過去山口百恵主演などでも映画化された川端康成のノーベル文学賞受賞作を、舞台を現代にうつして再映画化。原作に登場しない娘世代との考えの違いにスポットをあてています。地味ですが日本の美を再認識する機会になりました。

 作品情報 2016年日本映画 監督:Yuki Saito 出演:松雪泰子(二役)、橋本愛、成海璃子 上映時間:117分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ川崎 2016年劇場鑑賞279本目



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 【ストーリー】
 京都の呉服屋の女将佐田千重子(松雪泰子)は、時代の流れで呉服屋が斜陽になるなか店の存続に頭を悩ませていた。一人娘の舞(橋本愛)も、店を継ぐことは嫌だったが、代わりの夢をみつけられずにいた。

 一方、千恵子の生き別れの双子の妹で、京都郊外の北山杉の里に住む中田苗子(松雪二役)も、家業の林業が苦しかった。苗子の娘の結衣(成海璃子)は、絵画の才能があり、パリへ留学中。遠距離のため、なかなか連絡とれない結衣のことが気になっていたのだが…。

 【感想】
 原作の古都は、千重子と苗子の若い頃の話ですが、本作では二人とも結婚して家庭をもち、一人娘がいます。京都で伝統的な仕事をしているがゆえに、移り変わりの早い現代社会でどういきればいいか。親の世代も娘の世代もそれぞれ悩みつつ、なかなか本音をぶつけあえないもどかしさも感じられました。

 お茶の裏千家、華道の池坊、京都を代表する書家の小林芙蓉ら、京都の文化人が全面協力。パリを一方の舞台にすることで、世界に通用する日本文化のすばらしさというものを惜しげもなく表していきます。珍しく長い黒髪にしていた橋本愛が、髪をまとめて日本舞踊をするシーンがあるのですが、息をのむほど美しい。これほどの文化が続く日本に生まれて良かったとしみじみ思えました。

 しかし、呉服屋も林業も先行きが見えない厳しい時代です。千恵子も苗子も家業を存続させようと懸命にもがき、特に、千恵子パートに時間をさき、現実の厳しさも取り上げます。実は千恵子は先代(奥田瑛二)の実子ではなく(原作では捨て子、本作では里子)、夫の竜助(伊原剛志)も大店の跡取りをすてて、佐田の家に養子に入ってます。それだけに、千恵子の店を残そうという思い入れはひとしおで、みているこちらにも納得できます。

 また、過去の回想シーンで、千恵子と苗子が若い頃、たった一度だけ出会った思い出が効果的に挿入されます。時代が現代のため、20年前としても平成の話なので、回想シーンの演出に多少古くささを感じますが、これもまたいかにも日本人らしい心遣いがよかったです。

 ラストもきれいにまとまりました。地味な作品ですけれど、演者たちも好演しているし、なにより京都の寺社仏閣、茶の湯、生け花、書道、禅といった日本文化を改めて堪能することができました。現実で自分が京都に生まれたらきっとしがらみが大変だったろうけど、東京にいる僕の周りではこうしたしがらみ、伝統というのは見受けられないので、懐かしさもたっぷり感じました。
posted by 映画好きパパ at 07:09 | Comment(0) | TrackBack(2) | 2016年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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古都 ★★★・5
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