2016年12月12日

五日物語-3つの王国と3人の女

 17世紀にイタリアのジャンバティスタ・バジーレが書いた欧米最古の民話集「ペンタメローネ 五日物語」を元に、イタリアの鬼才・マッテオ・ガローネ監督が独特の映像美で魅せてくれました。

 作品情報 2015年イタリア、フランス映画 監督:マッテオ・ガローネ 出演:サルマ・ハエック、ヴァンサン・カッセル、トビー・ジョーンズ 上映時間:133分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズ日本橋 2016年劇場鑑賞280本目  



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 【ストーリー】
 中世。ロングトレリス国の王妃(サルマ・ハエック)は子供産めず、笑ったことはなかった。魔術師(フランコ・ピストーニ)から、海にいる怪物を退治し、その心臓を食べればたちまち懐妊すると予言された国王(ジョン・C・ライリー)は怪物退治のかわりに命を落とす。予言通り妊娠した王妃だが、怪物を調理した下女(ローラ・ピザリーニ)も妊娠してしまい。

 ストロングクリフ国の国王(ヴァンサン・カッセル)は、女性好きだった。ある日、城から町をながめ、美しい歌声に心を奪われる。だが、歌っていたのは老女ドーラ(ヘイレー・カーマイケル)だった。ドーラは若い女のふりをして、国王と一夜をともにするが、朝になり、ドーラが老女としった国王は、彼女を崖から突き落とす。奇跡的に助かったドーラは、気付くと若い美女(ステイシー・マーティン)の姿になっていた。そのことをしった妹のインマ(シャーリー・ヘンダーソン)は自分も若返って一緒に暮らすことを望む。

 ハイヒルズ国の国王(トビー・ジョーンズ)は巨大なノミをみつけて、飼っていた。ノミにばかりかまける王は、一人娘のヴァイオレット(ビビー・ケイヴ)の気持ちを考えもしない。結婚にあこがれるヴァイオレットのために、難題を解いたものと結婚させるという布告を出す。ところが、難問を解いたのは醜い鬼(ギョーム・デラネー)たった。

 【感想】
 本当は残酷なおとぎ話という言葉を彷彿とさせる3つの物語。欲望をつかもうとする女達は、それぞれ過酷な運命に見舞われます。一方、男はバカばかり。なんとも言えない苦みがありますが、イタリアの古城などで行ったロケが幻想的。さらに海の怪物や巨大ノミなどいかにもファンタジーぽい感じをださせます。

 ロングトレリス国の王妃は子供を産むことに執着し、相手がだれかということはとんちゃくしません。普通にかんがえたら夫は死んで、怪物を食べて子供を産むのだから、怪物と人間のハーフのような気もしますが。生まれてきた子供のエリアス(クリスチャン・リー)はたいへんな美少年であったこともあり、王妃は息子に異常なほど執着します。母親の過干渉をどう乗り越えるかというのは、現在にも通じる内容かもしれません。

 ドーラも、若さや国王の寵愛をうけて金持ちになることに執着し、何でもしました。現在だったら美容整形があるにしても、当時はそんなものはないのですから、余計に若さというのはあこがれがあったのかもしれません。妹のインゲはドーラよりも性格は穏やかなものの、姉に依存して、姉と暮らしたいという異常な執着をみせるうえ、ちょっと愚かです。若さへの欲望にとらわれたり、愚かなものはしっぺ返しを受けるというのも、なんとも哀しいですね。

 鬼が実はやさしくて、めでたしめでたしになるのなら、ディズニーの「美女と野獣」ですが、本作はそうではありません。鬼は不器用な優しさを示すのですけど、ヴァイオレットはイケメン男性との結婚できなかったことを恨みます。日本の民話でも魔物と結婚されて、王子様が助けてくれるという話しはよくありますが、魔物からすると悪いことをしていないのに理不尽な話。本作では王子の助けをまたずに、ヴァイオレットが意外な行動にでます。いつの時代でもブサイクな男は救われないという、ここでは男にとってつらい教訓が導き出されます。

 17世紀のおとぎ話が現代でも通用するというのは、人間というのはそんな簡単に変われるものでない証しなのでしょうね。
posted by 映画好きパパ at 06:53 | Comment(0) | TrackBack(5) | 2016年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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