2017年01月13日

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場

 テロリストに対するドローン攻撃を題材としており、どこまでが現実で起きているのか考えさせられます。まさに戦争は会議室で起きているわけで、実際問題、民間人が大量に戦死している状況をみると、なんとも複雑な気持ちになります。

 作品情報 2015年イギリス映画 監督:ギャヴィン・フッド 出演:ヘレン・ミレン、アーロン・ポール、アラン・リックマン 上映時間:102分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズシャンテ 2017年劇場鑑賞6本目  



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 【ストーリー】
 アフリカのテロリスト幹部を無人機ドローンで捜査している英米統合軍。ケニアでテロリスト達が集まり、自爆テロの準備をしていることを突き止めた指揮官のパウエル英軍大佐(ヘレン・ミレン)は、ネバダ州の基地でドローンを操作している米軍のワッツ中尉(アーロン・ポール)に空爆の指示を出す。

 だが、テロリストが拠点としている住宅の壁際で、幼い少女アリア(アイシャ・タコー)がパンを売り始めた。爆撃をすると少女も犠牲になってしまう。報告を受けた英軍のベンソン中将(アラン・リックマン)や担当大臣のウッデール(ジェレミー・ノーサム)は、爆撃の実施を巡って激しい議論になる。

 【感想】
 アフガニスタンやパキスタンでは民間人の誤爆は日常茶飯事だけど、ケニアは交戦状態にない同盟国なわけで、そこの少女を殺害することは国際問題になりかねません。現場のパウエル大佐は1人を犠牲にしても、大量の民間人に危害が及ぶ恐れがあるテロ実行犯の暗殺を主張します。

 ところが、政治問題に発展することを恐れた政府幹部はなかなか決断ができません。自分では決断できずに、上に丸投げするのは、日本政府も一緒なのかもしれませんが、これに対して、アメリカからは、民間人も関係なく、リスクをポイント化しており、速やかに排除するよう要請がくるというのは、国際情勢の縮図なのかも。

 アリアが貧しいながらも向学心にあふれ、懸命に生きようとする様子をしっかりと映し出すことにより、米英の幹部がきまぐれに決断しようとする様子はなんともいえない嫌な感じをさせます。一方、パウエル大佐に比べて、目の前の少女に動揺するワッツは、人間らしいかもしれないけど、米軍は実際にはもっとひどいことをしているのだから、何だろうなと思ってしまいます。

 一方、安全地帯の会議室にいる彼らと違い、パウエルの指示を受けて、ケニア情報部の工作員ジャマ(バーカッド・アブディ)が、テロリストの様子を探り、何とかアリアを助けだそうとします。このパウエルたちの無茶ぶりに翻弄される現地の様子も、戦争ではないのですが、日本の企業社会でも見られる風景ではないでしょうか。

 驚いたのはSF映画のように、鳥や昆虫の形をした小型ロボットをリモコンで飛ばして、情報を得ようとしていること。ローグワンよりも、先端の技術のようにみえてしまいます。さらに顔認証システムや、ロンドン、ネバダ、ハワイ、ナイロビを結んだ中継の作戦など、現在の戦場はこうなのかと思い知らされます。

 アラン・リックマンは本作が遺作。多彩な登場人物のなかでは、「キャプテン・フィリップス」で注目されたバーカッド・アブティの泥臭い存在感が光りました。遠い世界の戦争に見えますが、今もこういう出来事が起きていることが実感でき、多くの人にしってもらいたい作品です。
posted by 映画好きパパ at 06:56 | Comment(0) | TrackBack(12) | 2017年に観た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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