2017年03月23日

彼らが本気で編むときは、

 荻上直子監督の作品は緩すぎて今イチだったのですが、LGBTというセンシティブなテーマを扱うのに、彼女の温かい視点がぴったり。主演陣の好演もあいまり、素晴らしい作品になりました。

 作品情報 2017年日本映画 監督:荻上直子 出演:生田斗真、桐谷健太、柿原りんか 上映時間:127分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ川崎 2017年劇場鑑賞46本目 



ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村
 【ストーリー】
 小学校5年生のトモ(柿原りんか)は、シングルマザーの母ヒロミ(ミムラ)が新しい男を作って家出したため、久しぶりに叔父のマキオ(桐谷健太)の家に行くことにした。マキオの家にはLGBTの女性リンコ(生田斗真)がいた。

 「神様が間違えて女の子の心を男の体にいれてしまった」というリンコは性別適合手術を受けていた。最初はとまどっていたトモだが、おいしいご飯を作ってくれたり、風呂上がりに髪をとかしてくれたりなど、ネグレクト気味だったヒロミにしてもらえなかった、母親らしいことをしてもらい、なじんでいく。だが、リンコへの偏見は根強かった。そんなとき、彼女は編み物をすることで、怒りを忘れるようにしていたのだが…

 【感想】
 まだ偏見にとらわれておらず、自分自身も社会の弱者であるトモの目を通すことで、リンコの姿を温かく描いています。表面はしっかりしていて、親の愛を求めていて、弱いところのあるトモに対して、包容力があり、差別にあいつつも、やさしさをわすれないリンコの疑似母子関係は、これまでふたりとも得られなかっただけに、みていて心がほっこりします。普段の桐谷とは違って、物静かな青年になりきっているマキオもいい。

 また、リンコの母フミコ(田中美佐子)は、リンコを守るためにはどんなことをすると宣言しており、リンコが中学生のうちから、世間の偏見と闘っていました。その母親をみているだけに、リンコがトモに対して、保護意識をもったというのは良く分かります。ネグレクトして、男に走るヒロミとは好対照。

 介護施設で働くリンコは職場の同僚(門脇麦)とも仲良く、マキオというパートナーも居るわけですから、恵まれた環境にあるといえます。それでも、つらいことがある。ここに世間の偏見代表として、トモの同級生カイ(込江海翔)の母親ナオミ(小池栄子)がでてきます。スーパーで買い物するリンコとトモをみたナオミは、あんな変な人に近づいちゃだめといって、トモとトラブルになります。そして、自分の子供に、トモと遊んではダメと厳しくしかります。

 けれども、カイも実は同性愛の指向があることが描かれています。それゆえにナオミはLGBTに厳しくあたったわけです。娘のすべてを受け入れて守ってあげたフミコと、カイを守っているつもりで、世間の偏見に迎合してかえってカイを苦しめるナオミは好対照。母と子のありかたをかんがえさせられます。

 また、マキオとヒロミの母サユリ(リリィ)も親子関係がうまく作れませんでした。サユリは痴呆症で、リンコの働く施設に入所しており、トモをヒロミと間違え、厳しくあたります。ここにも母子の難しさが描かれています。

 興味深いのは、トモもリンコもカイもマキオも父親がでてこないこと。男性陣はマキオと、フミコの再婚相手ヨシオ(柏原収史)だけですが、ともに温厚で、マッチョズムとは縁遠い。母と子供に関係を絞りたかったのかも知れませんが、逆に父親の存在は何だと思いました。

 といって、難しい話しではありません。温かい笑いもたっぷりありますし、みているうちに、笑いながら涙がでてきそうになる不思議な感覚があります。また、ラストも改めて考えさせられることしきり。

 生田は「土竜の唄」と一変して、こんなに繊細な演技ができるとはびっくり。柿原も存在感にあふれており、今後が楽しみになりました。
posted by 映画好きパパ at 07:30 | Comment(0) | TrackBack(3) | 2017年に観た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

『彼らが本気で編むときは、』
Excerpt: □作品オフィシャルサイト 「彼らが本気で編むときは、」 □監督・脚本 荻上直子□キャスト 生田斗真、桐谷健太、柿原りんか、ミムラ、       小池栄子、門脇 麦、りりィ、田中美佐子■鑑賞日 ..
Weblog: 京の昼寝〜♪
Tracked: 2017-03-23 12:07

彼らが本気で編むときは、  監督/荻上直子
Excerpt: 【出演】  生田 斗真  桐谷 健太  柿原 りんか 【ストーリー】 母親が家を出てしまい置き去りにされた11歳のトモが、おじのマキオの家を訪ねると、彼は恋人リンコと生活していた。トランスジェンダー..
Weblog: 西京極 紫の館
Tracked: 2017-03-23 21:10

ショートレビュー「彼らが本気で編むときは、・・・・・評価額1700円」
Excerpt: 彼らが本気で編んでいるものとは? 母娘二人暮らしの母子家庭。 何かと問題のある母が突然失踪し、少女・トモが身を寄せたマキオ叔父さんの家には、トランスジェンダーのパートナー、リンコさんがいた。 ..
Weblog: ノラネコの呑んで観るシネマ
Tracked: 2017-03-25 22:49