作品情報 2017年日本映画 監督:荻上直子 出演:生田斗真、桐谷健太、柿原りんか 上映時間:127分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ川崎 2017年劇場鑑賞46本目
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【ストーリー】
小学校5年生のトモ(柿原りんか)は、シングルマザーの母ヒロミ(ミムラ)が新しい男を作って家出したため、久しぶりに叔父のマキオ(桐谷健太)の家に行くことにした。マキオの家にはLGBTの女性リンコ(生田斗真)がいた。
「神様が間違えて女の子の心を男の体にいれてしまった」というリンコは性別適合手術を受けていた。最初はとまどっていたトモだが、おいしいご飯を作ってくれたり、風呂上がりに髪をとかしてくれたりなど、ネグレクト気味だったヒロミにしてもらえなかった、母親らしいことをしてもらい、なじんでいく。だが、リンコへの偏見は根強かった。そんなとき、彼女は編み物をすることで、怒りを忘れるようにしていたのだが…
【感想】
まだ偏見にとらわれておらず、自分自身も社会の弱者であるトモの目を通すことで、リンコの姿を温かく描いています。表面はしっかりしていて、親の愛を求めていて、弱いところのあるトモに対して、包容力があり、差別にあいつつも、やさしさをわすれないリンコの疑似母子関係は、これまでふたりとも得られなかっただけに、みていて心がほっこりします。普段の桐谷とは違って、物静かな青年になりきっているマキオもいい。
また、リンコの母フミコ(田中美佐子)は、リンコを守るためにはどんなことをすると宣言しており、リンコが中学生のうちから、世間の偏見と闘っていました。その母親をみているだけに、リンコがトモに対して、保護意識をもったというのは良く分かります。ネグレクトして、男に走るヒロミとは好対照。
介護施設で働くリンコは職場の同僚(門脇麦)とも仲良く、マキオというパートナーも居るわけですから、恵まれた環境にあるといえます。それでも、つらいことがある。ここに世間の偏見代表として、トモの同級生カイ(込江海翔)の母親ナオミ(小池栄子)がでてきます。スーパーで買い物するリンコとトモをみたナオミは、あんな変な人に近づいちゃだめといって、トモとトラブルになります。そして、自分の子供に、トモと遊んではダメと厳しくしかります。
けれども、カイも実は同性愛の指向があることが描かれています。それゆえにナオミはLGBTに厳しくあたったわけです。娘のすべてを受け入れて守ってあげたフミコと、カイを守っているつもりで、世間の偏見に迎合してかえってカイを苦しめるナオミは好対照。母と子のありかたをかんがえさせられます。
また、マキオとヒロミの母サユリ(リリィ)も親子関係がうまく作れませんでした。サユリは痴呆症で、リンコの働く施設に入所しており、トモをヒロミと間違え、厳しくあたります。ここにも母子の難しさが描かれています。
興味深いのは、トモもリンコもカイもマキオも父親がでてこないこと。男性陣はマキオと、フミコの再婚相手ヨシオ(柏原収史)だけですが、ともに温厚で、マッチョズムとは縁遠い。母と子供に関係を絞りたかったのかも知れませんが、逆に父親の存在は何だと思いました。
といって、難しい話しではありません。温かい笑いもたっぷりありますし、みているうちに、笑いながら涙がでてきそうになる不思議な感覚があります。また、ラストも改めて考えさせられることしきり。
生田は「土竜の唄」と一変して、こんなに繊細な演技ができるとはびっくり。柿原も存在感にあふれており、今後が楽しみになりました。
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