2017年03月24日

哭声/コクソン

 國村隼が日本人として初めて韓国の青龍映画賞を受賞して話題になった、とてつもない怪作。特に後半は観る人によって解釈がすべて異なるでしょうし、キリスト教や日韓関係の知識があるほど、よりディープな世界にひたれるでしょう。

 作品情報 2016年韓国映画 監督:ナ・ホンジン 出演:クァク・ドウォン、ファン・ジョンミン、國村隼 上映時間:156分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:シネマート新宿 2017年劇場鑑賞47本目



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 【ストーリー】
 韓国の山村、コクソンで謎の猟奇殺人事件が相次いで起こった。事件はいずれも身内の犯行として処理されたが、村では、人里離れた一軒家にすみ着いた謎の日本人(國村隼)が事件と関係あると噂される。

 村の警官ジョング(クァク・ドウォン)は、犯人がいずれも謎の湿疹に覆われていることに気付く。やがて、ジョングの小学生の娘ヒョジン(キム・ファニ)にも湿疹がでて、様子がおかしくなっていく。ジョングは、事件を目撃したという女性ムミョン(チョン・ウヒ)の証言から、日本人が事件に関わっていると確信し、日本語が話せる神父見習いのイサム(キム・ドユン)らと日本人が住んでいる屋敷に乗り込む。

 【感想】
 全部現実に起きたのかそれとも超常現象によるホラーか。観終わった後も観客によって答えは異なるでしょう。さらに、キリスト教や韓国の土着信仰にまつわる知識や、日本人への田舎の庶民レベルの感情についての知識などによって、深みが変わってきます。僕自身も正直、全部が理解できたとは思えませんでした。

 冒頭に新約聖書ルカによる福音書の引用がでてきます。これはラストにつながる重要な手がかりであり、最後のシーンもこれを覚えているかどうかで一変します。さらに、ニワトリが3度鳴く前に…というのも、新約聖書の有名なエピソード。日本語が話せるイサムが神父見習い(まだ神父ではない)というのもポイントです。そして、ソウルならともかく、田舎の山村に韓国語をしゃべれない日本人がすみ着くことの違和感。このへんの閉鎖された田舎に異物が入り込む感覚は日本でも同様なのかもしれません。

 さらに、ジョングたちは娘の異状を何とかしようと、高名な祈禱師イルグァン(ファン・ジョンミン)にすがりつきます。近代文明が続いても、こうしたアミニズムに頼るというのは日本でも残っているでしょうが、警官という近代文明の守り手であるジョングが、こうした怪しげな手段に頼らざるを得ないという意味も考えさせられます。

 もう一つの軸は情けない父としっかりものの娘の関係。警官でありながら、凄惨な事件現場を直視できないようなジョングに対して、小学生でもしっかりしたヒョジンが突っ込みをいれることに家族も同僚も温かく見守っています。しかし、その娘がどんどんおかしくなり、妻(チャン・ソヨン)はおろおろするだけ。一家の大黒柱として、ジョングは発狂しそうになりながらも事件解明にあたります。ところが、あがけばあがくほど泥沼に落ちてしまうというのがなんとも哀しい。

 深刻なストーリーですが、随所に韓国映画らしい滑稽さが随所にまざっているのもいい。國村隼は裸で四つん這いになって獣をむさぼり喰いますし、序盤の失敗ばかりのジョングを助けるヒョジンの様子は場内から笑いがでました。ノリノリのファン・ジョンミンの祈禱も笑えます。ただ、こうしたユーモアめいた部分も、終盤になるとすべて反転して、凄惨な意味をもたせるのも、いかにも韓国映画でした。

 見ている間は一気呵成ですが、見終わった後にぐったりとする、そんな作品で、韓国映画ファン、ホラー映画ファンにはお勧めの作品です。クァク・ドウォンとファン・ジョンミンは「アシュラ」で見たばかりですが、芸域が広いなあと感心しきり。でも一番すごかったのは子役のキム・ファニでした。
posted by 映画好きパパ at 07:46 | Comment(0) | TrackBack(7) | 2017年に観た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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