2017年04月02日

私はダニエル・ブレイク

 かつては「ゆりかごから墓場まで」と言われ、福祉が充実していたイギリスの悲惨な現状を、巨匠ケン・ローチが温かい視点を持ちつつも、哀しみに満ちた作品にしました。真面目なだけでは生きられない厳しい社会。日本もこのような事態に陥らないといえませんが、やっぱり自助努力が必要なんだなと思ってしまいました。

 作品情報 2016年イギリス映画 監督:ケン・ローチ 出演:デイヴ・ジョーンズ、ヘイリー・スクワイアーズ、ディラン・フィリップ・マキアナン 上映時間:100分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2017年劇場鑑賞56本目



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 【ストーリー】
 イギリス北東部の町ニューカッスル。初老の大工ダニエル・ブレイク(デイヴ・ジョーンズ)は妻を失い独り暮らし。真面目で腕も良かったが、心臓病で仕事を失い、失業給付の申請に役所を訪れる。だが、担当部署をたらい回しにされたあげく、一方的な審査を受け、給付は打ち切りに。

 途方に暮れたところに、幼い子供2人を抱えたシングルマザーのケイティ(ヘイリー・スクワイアーズ)が、役人に冷たくされているのをみて、つい、怒鳴ってしまう。役所を追い出されたダニエルとケイティ親子は、これをきっかけに助け合うようになる。しかし…

 【感想】
 冒頭、マニュアルに沿っただけのお役所仕事がひどい。医師か仕事を禁止されている重い心臓病なのに、電話窓口のオペレーターは関係ない肛門の状態などを延々と聞かれ、あげくのはてに働かないのは本人が悪いと決めつける。実際イギリスでは重病で死にかけた人まで、働けるとの結果がでて失業給付が降りず社会問題化しています。このオペレーターも役人ではなく、アメリカの業者が請け負っていて、機械的に決めつけるというのがいかにも現代的。

 また、ケイティも引っ越したばかりで道に迷い、面談時間にわずかに遅れただけで、いじめのような仕打ちを受けます。役所のなかにも良心的な人はいますが、上司からマニュアル以外の仕事をすると処罰するといわれ何もできません。

 ろくに食べ物すらなくなったケイティはフードバンクを頼ります。日本でも徐々にフードバンクは広がっていますが、イギリスでは保守党が福祉の打ち切り政策をはじめてから、利用者は1年で4倍に増えたとか。緊縮財政がいかに国民を苦しめているか、イギリス在住の保育士ブレイディ・みかこさんのコラムが詳しく伝えています。 https://news.yahoo.co.jp/byline/bradymikako/20170324-00069042/

 一度、底辺に落ちた二人はなかなか這い上がれません。そんな彼らを尻目に、同じように貧しかったダニエルの隣人の若者たちは、中国からブランド品を並行輸入して売りさばき、もうけます。つまり、目端がきくかどうかが、まさに生きるか死ぬかにかかっているわけです。こうしたことができないのは、真面目に生きてきたけど、老人でネットも使えないダニエルのせいなのでしょうか。「私は犬ではない、人間だ」という非常に重たい言葉が出てきて心をうたれます。一方で、プライドというのはそこまで必要なのかというのも考えさせられます。

 日本も年金は減額されるでしょう。国を頼りたくても、そもそも国にお金がない。むしろリベラル派は成長しなくてもいいといった暴論を述べたりします。そうしたなか投票にいくなり、自分で資産形成を図るなりといった防衛策をたてなければ、近い将来、何も考えていない人は、社会の底辺で埋もれていく危険は十分にあります。

 また、ブレクジットやトランプ現象のヒントがここにある一方、それでも保守党が与党になっている現状はなんなのでしょうかね。とにかく、現代を生きる人すべてにみてもらいたい作品です。なお、有料で鑑賞すると50円が貧困支援にあてられます。ぜひ映画館でどうぞ。
posted by 映画好きパパ at 07:02 | Comment(0) | TrackBack(9) | 2017年に観た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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