2017年06月14日

美しい星

 三島由紀夫の原作を鬼才・吉田大八監督が現代に翻案した何とも強烈な作品です。ストーリーは矛盾が多いのですが、美術、音楽も含めて独特の雰囲気に引き込まれました。特に橋本愛の美しさはまさに異次元のものです。

 作品情報 2016年日本映画 監督:吉田大八 出演:リリー・フランキー、亀梨和也、橋本愛 上映時間:127分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:横浜ブルク13 2017年劇場鑑賞98本目 



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 【ストーリー】
 天気キャスターの大杉重一郎(リリー・フランキー)はアシスタントの玲奈(友利恵)との不倫の帰り道、運転中にまばゆい光に包まれて記憶を失う。やがて彼は太陽系連合の一員で地球人に温暖化の危機を訴えにきた火星人であるとの記憶を取り戻す。

 同じ頃、長男でフリーターの一雄(亀梨和也)は水星人であることに目覚めて、同じく水星人の議員秘書・黒木(佐々木蔵之介)の部下に。長女で大学生の暁子(橋本愛)も路上シンガーの竹宮薫(若葉竜也)の「金星」の曲をきき、金星人として覚醒する。重一郎の妻の伊余子(中嶋朋子)は、そんな家族の変貌にとまどうのだが…

 【感想】
 異星人をテーマにしたSFであるとともに、表面はうまくいっていても崩壊しかけた家族の再生の物語でもあり、その両方がうまい具合に盛り込まれています。そもそも、一家は本当に宇宙人なのか、それとも、妄想にすぎないのか。前半は宇宙人の話で進みながら、後半は一転、妄想説を強めています。それゆえにラストもどうとるのか、受け手によって違うでしょう。

 重一郎が地球温暖化対策を訴えるほど、世間は彼のことを道化にしかみえません。そりゃそうでしょう。自分は火星人だとお天気キャスターがいいだしたら。けれども、今の情報化社会では、むしろそれもギャグの一環として消化され、重一郎の人気が出てしまうという不思議な現象すら起きてしまいます。地球温暖化対策はまったなしなのに、現実社会でもトランプ政権のように認めない勢力が強いわけですから、重一郎がまじめに訴えるほど、真剣みが薄れるというのは人間の哀しい側面ともいえましょう。

 環境破壊をしている人類はこの美しい星にとって不要なのか、それとも、地球の支配者たる人類がいるからこそ地球は成り立つのか。かつてみたウルトラセブンを想起させるようなSFちっくな議論は僕自身は好みです。予告編でも流れていますが、重一郎が「美しい」とつぶやく風景が、都会の夜景であることが象徴的ですが、その一方で、福島原発事故のこともさりげなく盛り込んであり、ここらへんも観客が考えるべきというスタンスなのかもしれません。

 一方、人気キャスターの妻ということで、優雅な生活を送っていても、家族の心はばらばらで、伊余子は怪しげな水のビジネスにはまっていきます。一雄もフリーターである自分に自信がなく、暁子もまじめすぎるが故に学校では浮いています。家族4人が顔を合わせても本音をいうことがなく、よそよそしい雰囲気が流れていました。それが、重一郎が火星人となのに、子ども2人にもそれぞれ事件が起きることで、いったんばらばらになっても、家族の絆が再生されていきます。これもまた人間の不思議なところですが、ここで壊れるかどうかが家族の真価が問われるところ。

 さて、物語を妄想で終わらせないのは黒木という謎の男の存在でした。彼自身も水星人であると主張しており、不思議なことが起きています。つまり、大杉一家だけの問題でなく、外に広がっており、宇宙人説の有力な根拠になっているのです。演じている佐々木蔵之介が、これまでにない冷徹でドSの演技をしており、この演技は本当にみものでした。

 そして何より、橋本愛の美しさ。いや、もともと美人女優なのですが、美の象徴である金星人という役柄もあり、地球のゆがんだ美を直してくれるたたずまい、雰囲気というものが美の化身そのものでした。彼女の姿をスクリーンでみるだけで入場料の価値があるでしょう。このほか、脇役で「葛城事件」の若葉や「ケンとカズ」の藤原季節が強烈な印象を残しており、隅々までキャラがたっている吉田監督の演出手腕も感じました。
posted by 映画好きパパ at 07:01 | Comment(0) | TrackBack(6) | 2017年に観た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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美しい星 ★★★★
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Excerpt: 途中まで所々笑えて面白かったなぁ。
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17-192「美しい星」(日本)
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