作品情報 2015年スペイン、アルゼンチン映画 監督:セスク・ガイ 出演:リカルド・ダリン、ハビエル・カマラ、ドロレス・フォンシ 上映時間:108分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2017年劇場鑑賞121本目
にほんブログ村
【ストーリー】
カナダに住んでいるトマス(ハビエル・カマラ)はスペインで俳優として活躍している親友のフリアン(リカルド・ダリン)が末期がんで余命わずかと、フリアンの従姉妹のパウラ(ドロレス・フォンシ)から聞いて、4日間の予定でフリアンのところへ駆けつけた。
久しぶりに会う親友の訪問に戸惑うフリアン。離婚して、大学生の息子もオランダの大学に進学してひとりぼっちの彼は、ペットの犬の里親捜しをするなど、身辺整理をしている最中だった。トマスは彼の手助けをしようと、犬の里親捜しや、オランダの息子訪問などを一緒にすることになる。
【感想】
ヨーロッパの人って国境を越えて生活しているのだなとしみじみ感じさせられます。若い頃の親友で、おそらくパウラとも恋人関係にあったトマスは今はカナダで家族と暮らし、スペインに戻ることはありませんでした。またパウラも離婚してアルゼンチンに引っ越そうと考えています。そして、フリアンの息子はオランダに。コスモポリタンだけど、人生の週末になると世界中に散るというのは、その足跡をたどるだけでも大変だなあ。
さて、末期がんを受け入れたフリアンは延命治療を断り、自分のやりすごしたことを行います。やはりそれは家族。長年飼った犬も家族ですし、離れたところにいる息子も家族。フリアンは有名な俳優ですが遊びも激しかったためか、お金がなく、トマスが出してあげるありさま。でも、そこまでしてくれる友人がはるばるきてくれるだけの人徳がフリアンにあるわけで、人間最後は金でなくて友情や家族の絆をいかにたもてるかということだと実感しました。
里親捜しに苦労したり、息子にはるばる会いに行ったアムステルダムで息子の彼女にめぐりあえたりと、簡単なようでも人生はなかなか思うにまかせません。特に息子と会うシーンは、後になって思い返せば、より心にしっくりするような大人のエピソード。
このほか、体力のある限り舞台にたつつもりだったフリアンが、周囲の病気への同情や懸念から降板させられたときの怒りや、自分のせいで、友情が壊れてしまった元友人と偶然再会したときの戸惑いなど、死を受け入れているからといって、感情を超越するのではなく、人間らしい喜怒哀楽がしっかり残っているというのも感慨深かった。
ハビエル・カマラはアルゼンチンの有名俳優で、病気、生死、友情、家族などあらゆるものにアンビバレンツな感情をもっているフリアンを熱演しています。なにより、トマスとの関係やパウラとの関係など、説明を最小限にして、受け手の想像に任せている大人の映画だというのもいい。じっくりおちついてみられる作品でした。
【2017年に観た映画の最新記事】