2017年07月28日

彼女の人生は間違いじゃない

 福島に生きる人たちの心情を淡々としたタッチで取り上げた廣木隆一監督の新作で、原作も廣木監督が書いています。主人公の心理描写はあえて不足気味にして、観客の方に想像させる手法をとっていますが、見事な裸のほうに目がいってしまいました(笑)

 作品情報 2017年日本映画 監督:廣木隆一 出演:瀧内公美、高良健吾、光石研 上映時間:119分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:新宿武蔵野館 2017年劇場鑑賞123本目



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  【ストーリー】
 福島県いわき市役所に勤めるみゆき(瀧内公美)は震災で母をなくし、父の修(光石研)と仮設住宅にすんでいた。みゆきは週末になると東京・渋谷のデリヘルでゆきと名乗って風俗嬢として働き、修は生き甲斐だった農地が立ち入り禁止で入れず、賠償金を元手にパチンコばかりでぶらぶらする毎日だった。

 【感想】
 なぜみゆきが週末になると東京で風俗嬢として働くのか、彼女のモノローグはなく、観客の想像にゆだねられます。しかし、普段は市役所で淡々と働く彼女に震災が大きな傷をあたえ、生き残ったことへの罪悪感や生きていることを実感したいことなど、さまざまな思いがあったのかという想像がつきます。

 一方、パチンコで暇つぶしをしている修。端から見ればなまけているようにしか思えないのですが、震災前は家族仲もよく、畑仕事にせいをだしていたのに、何もかが奪われてしまった。それでいて、責任のいったんがある東京電力から賠償金が入る。彼が人生に投げやりになっても不思議ではありません。でもみゆきにとって、かつてのやさしい信頼がいのある父親が、生ける屍になっていることへの不満もあったのでしょう。

 こういう家族が実際に福島にいるのかわかりません。しかし、被災地以外の多く人が震災から6年たって、もう完全に過去のものと割り切っていても、彼らにとってはまさに今なのです。常磐道が復旧して、インフラが元通りになっても、心はそんなに簡単に戻らない。みゆきの同僚で市役所の広報の新田(柄本時生)が東京から卒論の取材にきた女子大生の屈託のない質問に答えながらも吐いてしまうというのは、福島県出身の廣木監督だからこそいいたいことかもしれません。

 かといって、時間を止めたままにはいきません。いわき出身で故郷を撮影する女性カメラマン(蓮佛美沙子)がその象徴です。また、東京の人間ですが、デリヘルの運転手・三浦(高良健吾)とみゆきの距離感の変化も時間が徐々にですが動いている証なのでしょう。

 主演に抜擢された瀧内公美はアンニュイだけど、時折感情を爆発させ人間らしさをみせるその両面をよくみせていました。ぬぎっぷりもよく、またピンク映画をとっていた廣木監督ならではの、いかにエロっぽく見せるかというアングルによく答えていました。脇にも光石、柄本、高良ら、若手からベテランまで演技の達者な人をそろえています。いわゆる劇的なエンタメ的な盛り上がりはないのですが、2017年の日本を透徹した視点で描いた秀作といえましょう
posted by 映画好きパパ at 06:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 2017年に観た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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