2017年08月08日

ブランカとギター弾き

 フィリピンのスラムで生きる少女を主人公に、生きることの困難さと一筋の希望をあらわしたヒューマンドラマ。日本人の長谷井宏紀監督がベネチア映画祭の出資で撮影したという国際色あふれる作品です。

  作品情報 2015年イタリア映画 監督:長谷井宏紀 出演:サイデル・ガブテロ、ピーター・ミラリ、ジョマル・ビスヨ 上映時間:77分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:シネスイッチ銀座 2017年劇場鑑賞132本目



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 【ストーリー】
 フィリピンのスラムに暮らす幼い少女ブランカ(サイデル・ガブテロ)は、父親をしらず母親に捨てられ、路上に寝泊まりしながら物乞いやスリをしてその日を暮らしている。街頭のテレビで有名女優がスラムの子供を養子にとったニュースをみて、自分も母親を買おうと思いつく。

 やはりホームレスで盲目の老いたギター弾きピーター(ピーター・ミラリ)と知り合ったブランカは、スリをやめるよういわれ、路上で彼のギターに合わせて歌うことでお金を稼ごうとする。美しい歌声はたちまち評判になったのだが…

 【感想】
 サイデル・ガブテロはユーチューブで歌が人気となった少女で映画は初出演。ピーター・ミラリは生涯を路上で送り、映画完成後まもなくなくなりました。金持ちの俳優ではない出演者の共演がリアルさを醸し出します。犯罪が横行し、人の命などこれっぽちも顧みられないスラムの日々。ブランカもだまされて売春宿に売られそうになります。現実のスラムの住民の大部分はこうした運命を逃れられず、若くてして命を落とすのでしょう。

 ブランカもちょっといいことがあれば、より不幸なことが起きてしまう繰り返し。人生に絶望してもおかしくありません。10歳にもならない少女にとって町を歩けば仲の良い親子や、楽しそうな学校生活をみかけます。普通の人にとっては当たり前のこうした幸せもしらないスラムの子供たち。ブランカの時折みせる絶望的なまなざしが胸に焼き付きます。「大人は子供を買えるのに、子供は大人を買えないの」とは何ともいたましく、突き刺さるような台詞でした。

 盗みだって悪いことだとわかっています。だから、ピーターにたしなめられたら、素直に反省する。だけど、盗みをしなければ飢え死にしてしまうという厳しい現実もあります。大人たちも自分が生きるので精一杯で、少女を助けるどころかむしろ食い物にしようとします。こうしたなか、ピーターという盲目でも暖かい心を忘れられない老人と知り合ったことは彼女にとってどんなに幸運だったことなのか。

 後半になってもブランカの厳しい人生は変わりません。クライマックスでは奇跡とはいえない奇跡がおきるのだけど、せめて映画の世界だけでも、こうした子供たちに幸せになってほしいという監督からのメッセージなのでしょうか。長谷井監督はカメラマンとして世界をまわり、フィリピンのスラムでの体験も長いそうです。ある意味、第三者の暖かさと客観性をもったまなざしが、この映画の価値を高めているといえましょう。

 ただ、こうした子供の貧困は他人事ではありません。日本でも子供の貧困は大きな社会問題でありますし、直近では改善されているものの、中長期で見ると高齢者ばかり優遇されて子育ては大変となり、子供の格差はますます拡大する可能性が高いのではないでしょうか。こうしたなか、大人が何をできるのかということも自分の身として考えなければなりませんね。
posted by 映画好きパパ at 06:11 | Comment(0) | 2017年に観た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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