2017年09月12日

新感染 ファイナル・エクスプレス

 韓国で初の長編ソンビ映画は、いかにも韓国映画らしい特徴を兼ね備えた傑作になりました。さほど残酷なシーンがないので、ホラーが苦手な人でも楽しめます。

 作品情報 2016年 韓国映画 監督:ヨン・サンホ 出演:コ・ス、キム・スアン、マ・ドンソク 上映時間:1188分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ川崎 2017年劇場鑑賞154本目



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 【ストーリー】
 エリート証券マンのソグ(コン・ユ)は仕事優先の冷たい男で、妻は愛想を尽かして実家の釜山に戻っていた。小学生の娘のスアン(キム・スアン)の誕生日、ソギョンに頼まれ会社を休んで一緒に始発の高速鉄道で釜山に向かうことになった。列車にはチンピラ風の男サンファ(マ・ドンソク)と妊娠中の妻ソギョン(チョン・ユミ)、高校野球野球部の一行、釜山に戻るバス会社の重役ヨンソク(キム・ウィソン)ら多彩な客がのっていた。

 ソウル駅出発直前、異様な風体をした女(シム・ウンギョン)が乗ってくる。彼女は床に倒れてけいれんしていたかと思うと、いきなり乗務員にかみついた。ソウル全域に人間を凶暴化させる謎の感染病が蔓延していたのだ。車内がパニックになるなか、ソグは生き残った乗客とともに、何とか釜山へ逃れようとするのだが…

 【感想】
 時速300キロで走る列車内での必死のサバイバルだけでなく、途中停車した駅でのゾンビの襲撃など、いつどうなるか疾走します。最近みたゾンビ映画は「アイアムアヒーロー」とか「ワールドウォーZ」とか、あちこち動き回る話が多かったのだけど、本作は基本的には車内でのサバイバルという限られた空間だけに、余計に緊迫感がまします。また、電車に乗った一般人なので銃どころか、刃物すらもっておらず、どうやってゾンビと対決するかも大きな見所。

 そもそもアバンタイトルから、結構、意表を突く感じのうえ、危険と安全の緩急の差がうまい。さらに、ソグとスアン親子だけでなく、サバイバルをかける乗員乗客が10人近くいますが、いずれもキャラがたっています。しかも、意味ありげな人物があっさりやられるなど、結構、意外な順番で犠牲になるのもおいしい。生き残りの人間の間で醜い争いが起きるというのも定番ですね。もっとも、僕がこういう現場にいたら、たぶん、醜い方になってしまうでしょうが。また、親しい人がゾンビになったときにどうするのか、というシーンも何回かあって考えさせられました。

 同時に、親子の情愛、自己犠牲といった韓国映画らしいウェットな素材をたっぷりと使っており、泣けるゾンビ映画というキャッチフレーズもむべなるかな。ソウルがやられて釜山に逃げるというのは、朝鮮戦争がバックグラウンドとしてあるという話もネットでみましたが、そのへんで奥行きの深さがあるのかもしれません。

 ゾンビはルールがあります。まず、全力疾走型のゾンビ。明るいときは視覚で人間をみつけ、暗くなると動きが鈍くなり音に反応します。また、首をかまれたらすぐゾンビかしますが、手や足などは、ゾンビ化するまでしばらく時間がかかります。また、力はそれほどなく、けんか慣れしたチンピラにぼこぼこにされたりします。この基本ル−ルをもとに、しっかりとゾンビが動きます。

 ソグは最初は自己中心的で冷たいエリートだったのですが、バカにしていたチンピラのサンファが妻を守るために必死になる姿や、幼い娘が冷たい自分を嫌っていることをみて、弱い他の乗客を助けるためように成長します。自分だけでは生き残れなかったのが、協力することで何とか対応できるのでした。このあたりの描写もうまい。さらに、何気ない場面がしっかりラストの複線になっており、脚本もなかなか見事です。

 青春スターの印象だったコ・スはもう父親役なんですね。娘を守るために戦い続ける姿は、同じ父親の身の僕としては、ぐっときました。チョン・ユミとは「トガニ」の主役コンビで、あのときの2人がこうなるんだ、とちょっと感慨深い。そのコ・スをくってしまったのが、マ・ドンソク。韓国映画ファンにはおなじみの、迫力ある悪役俳優ですが、本作ではゾンビにドロップキックをかますなど大活躍する一方、若くて身重の妻には頭があがりません。また、スアンにもやさしく接しており、一番おいしい役柄だったかも。

 何より、子役のキム・スアンがよかった。最初は男の子かと思ったくらいで、およそ美少女とはいいがたいのですが、逆にその点がリアルさをよんだのかもしれません。最後は彼女が生き残るかどうか、見ているこちらも必死になって祈っていました。おまけとして、最初の感染者役が、若手スターのシム・ウンギョンというのも驚きました。実は、前日譚のアニメ「ソウル・ステーション/パンデミック」では彼女が主役なんでしょうね。まだ未見ですが、急に気になりました。

 なお、韓国鉄道公社は本作を気に入り、運転士役のチョン・ソギョンが名誉運転士に認定されたそうです。新幹線大爆破で怒って民営化されても新幹線の映画撮影に厳しいJR東海は見習ってほしい(笑)
posted by 映画好きパパ at 06:51 | Comment(0) | 2017年に観た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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