2017年09月17日

幼な子われらに生まれ

 いかにも邦画らしい細やかさと親子の愛情を感じさせられる秀作。正直、ぬるい作品が多かった三島有紀子監督が、これだけ家族の愛情と緊張を描ける作品をとれたのは驚きでした。荒井晴彦の脚本と子役も含めた演者の魅力も大きかったのでしょうね。

作品情報 2017年 日本映画 監督:三島有紀子 出演:浅野忠信、田中麗奈、寺島しのぶ 上映時間:127分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ川崎 2017年劇場鑑賞158本目



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 【ストーリー】
 バツイチ同士で再婚した田中信(浅野忠信)と奈苗(田中麗奈)。信は奈苗の連れ子で小学6年生の薫(南沙良)が反抗的なことに頭を悩ませている。折から奈苗の妊娠が判明し、薫の感情をこれ以上こじらせないために産むかどうか迷う信は、薫の頼みで、薫の実の父(宮藤官九郎)の行方を捜すことになる。

 一方、別れた妻友佳(寺島しのぶ)から、実の娘の沙織(鎌田らい樹)との面談を延期してほしいと連絡があった。友佳の今の夫が末期がんで死にかけているというのだ。実の娘と相手の連れ子の娘の関係に揺れる信。さらに、勤務先の会社の経営が苦しくなり、子会社に左遷されてしまう。

【感想】
 女性は子どもでも男を振り回すのが得意なのだな、とちょっとシニカルな気持ちにもなりました。ただ、思春期に入りかけた薫の気持ちも何となくわかります。義理とはいえ一緒に暮らす父親が自分よりも実の娘のことを気にかけるのではという不安、そして、戸籍上は父親でも見知らぬ雄がいることへ、女になりかけた自分の潜在的な警戒心。

 一方、沙織のほうは普段、実の父親に会えないためか、たまに信とあうとべったりまとわりつきます。薫の妹の恵理(新井美羽)はまだ幼く義理の親子ということをしらずにやはり信のことが大好きですし、信にとってどの子が一番大切かというのは本当に難しい。浅野が普段の役柄と違って、温厚でただおろおろしてしまうところがなんともいえません。

 そして、奈苗、友佳というタイプの異なる二人の妻に振り回されるところも、男の弱さ、情けなさが伝わってきます。その人がよい故にまともに対峙できず、バリキャリの友佳には見捨てられ、依存的な体質がある奈苗とはすれ違いばかり。ああ、実際、男ってこうだよなと思わせる演出は、女性監督ならではのものでしょうか。

 また、DV男の宮藤官九郎もうまい。人生に投げやりになり、それもまた妻や子どものせいだと淡々と語る彼も、また、弱い男の一タイプなんでしょう。どこにでもいる普通の人たちが、家族という愛おしくもうざったいものにどう対応するのか。そうはいってもタイトル通り、幼な子の存在というのが人間にとってどれだけかけがえのないことか。久しぶりに考えさせられる邦画を見ました。

 また、子役3人もそれぞれ違ったタイプの役柄ですが、最近の子役は本当にうまいとうならされました。こういう作品にどんどんでて、次世代を担う女優に成長してほしいものです。
posted by 映画好きパパ at 07:02 | Comment(0) | 2017年に観た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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