作品情報 2016年イギリス映画 監督:ロジャー・スポティスウッド 出演:ルーク・トレッダウェイ、ルタ・ゲドミンタス、ジョアンヌ・フロガット 上映時間:103分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:新宿ピカデリー 2017年劇場鑑賞168本目
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【ストーリー】
ホームレスをしながら路上で演奏して日銭を稼いでいるジェームズ(ルーク・トレッダウェイ)は麻薬中毒のリハビリに苦しんでいた。NGO職員のヴァル(ジョアンヌ・フロガット)の尽力で、ようやくぼろアパートの一室を借りられた彼は、入浴中、部屋から物音が聞こえてきて、泥棒が入ったのではと警戒する。
それは1匹の茶トラのネコだった。おなかをすかした猫にえさをあげると、すっかりなついてきた。隣人の女性ベティ(ルタ・ゲドミンタス)は猫のことをボブと呼び、けがをしているから獣医につれていくよういう。猫はジェームズのあとをついて歩き、肩に乗っかるようになる。すると、今まで見向きもされなかったジェームズは、たちまち町の人気者になった。しかし…
【感想】
基本的に最初は猫を救ったホームレスが、猫の恩返しでまっとうな生活に戻れるというハートウォーミングな話なのだけど、ホームレスをめぐる結構シビアな状況もきちっと描いています。予告編でもありましたが、朝から何も食べ食べていないのに、ほんのちょっと小銭が足りないだけで、ファストフードのレストランから追い出されたり、ただでさえ乏しい食費を麻薬に回してしまったりと、どん底まで落ちた人間の惨めさというのが現れています。
しかも、ジェームスの場合、親にも見捨てられており、父のジャック(アンソニー・ヘッド)とばったり町であったにもかかわらず、わずかなお金を握らされるだけで、クリスマスの食事にこないでくれといわれるほど。周囲との関係が断ち切れて、貧困や麻薬にはまり、ますます周囲に嫌われという悪循環がでています。
そんな彼を救った第一の功労者はボブだけど、ヴァルやベティといった人たちが周囲にいたのは幸運だし、救いの手をはらいのけずにうまくつかんだジェームズ自身のおかげともいえます。ただ、もしもボブがいなければ、孤独で猜疑心に陥るし、ベティもジェームズを警戒したでしょうから、救いの手はのびなかったかもしれません。どんなに小さな命でも、守ってあげたいと自分の食費を削ってまで親切にしたジェームズの行いを神様が見ていたのかもしれません。
また、ジェームズが変わるとともに、過去や世間体にとらわれていたベティやジャックも変わっていくという構造もうまい。結局、人間は金銭的なことだけでなく、人とつながり前に進むことがいかに大事かを悟らせてくれました。
ボブは映画初出演と思えない名演技で、ほかに7匹の猫が用意されていたそうですが、大部分をボブ自身が演じたそうです。また、ビッグイシューがイギリスでもしっかり活動しているのをみると、日本での活動も応援したくなりました。人の生きる意味や貧困とはなにか、ユーモア混じりでほろ苦くなりながらも考えさせられますし、時々猫目線にもなるから、難しいことは抜きにして猫が好きなだけでも楽しめる作品です。
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