作品情報 2016年韓国映画(アニメ) 監督:ヨン・サンホ 声の出演:シム・ウンギョン、リュ・スンリョン、イ・ジュン 上映時間:92分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ川崎 2017年劇場鑑賞182本目
ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください
にほんブログ村
【ストーリー】
夕方のソウル駅。ホームレスの老人が血を流して苦しんでおり、老人の弟が助けを求めるが、汚いホームレスに通行人も駅員もかかわろうとしない。夜中になり駅がしまること、老人は死んでしまった。だが、不思議なことに遺体は消えてしまった。
田舎から家出してソウルに流れ着き、風俗嬢をしていたものの、そこから逃げたして今はヒモのキウン(声・イ・ジュン)にこき使われている少女ヘスン(シム・ウンギョン)。キウンに再び体を売って金を稼ぐようにいわれてけんかとなり、ヘスンは2人で暮らしていた簡易宿泊所を抜け出して駅に向かった。一方、ヘスンの父(リュ・スン)はネットの出会い系サイトでヘスンをみつけて、連絡先であるキウンのところにどなりこむ。そんななか、ホームレスの老人はゾンビのような凶悪な感染者になり、駅周辺はパニックに。ヘスンも必死で逃げ出すのだが…
【感想】
同じゾンビ映画を描いているのに、ウェルメイドでできている新感染とはうって違って、社会の暗部を冷酷にとらえた作品。新感染の主人公はエリートビジネスマンだったり、将来を嘱望されている高校生や妊婦といった未来ある人々で、その未来を守るために必死になって戦いました。しかし、本作にでてくるのは、借金まみれの風俗嬢、ヒモ、ホームレスの老人など社会の底辺ばかり。ぶっちゃけ、このまま現実の世界でつらい人生を歩むよりも、ゾンビになったほうが幸せかと思えるほど。
新感染同様、ゾンビという概念がないため、人々は何が起きたのかわかりません。最初はホームレスの暴動として警察に伝わります。すると警察はホームレスというだけで差別して、撃ち殺そうとします。差別される人間が国民を守るはずの警察に殺されるというのは、ゾンビ映画のルーツみたいのところがありますが、韓国の場合、ゾンビと関係ない映画をみても国家にたいする不信感が根強く、実際セマウル号事故のように、海洋警察や船長といった人たちが、弱者を見殺しにするのですから、この映画の警察のあり方というのも、韓国にとっては当たり前なのでしょう。
また、日本以上に格差社会となっている韓国では、ホームレスになったら浮かび上がれません。ただ、ホームレスの老人が苦しんでいるときに助ける人が日本でもどれだけいるのか。僕自身、たぶん、気味悪がって近づかないでしょう。さらに、韓国の高度成長を支えた労務者が、年をとってホームレスにならざるを得ないのに、まっさきに排除する社会の仕組み。感染者に襲われ地下鉄の線路に逃げ込んだヘスンが「おうちに帰りたい」と泣くと、ホームレスの老人が「俺には帰るうちもない」と慟哭する姿は目を背けたくなります。そういう、下層だ決めつけて差別する中級、上級の人たちに天罰が下るのも、現代の格差社会への監督の怒りがストレートに伝わってきます。家出したことを反省して、故郷の父親に会いたいと思っていたヘスンが、クライマックスで逃げ込んだところが、高級タワーマンションのモデルルームというのが皮肉に感じてなりません。
新感染の多くのキャラクターは善良さが出てきたのに対して、本作は徹頭徹尾、人間のいやな部分がみせつけられます。ヒロインであるヘスンにしろ、自分が生き残るのに精一杯で、自分の行動のおかげでほかに犠牲者がでても、気にとめる時間もありません。それもリアルといえばリアルでしょう。
日本やディズニーなどの美女とイケメンキャラクターになれていると、こういうリアルっぽいどんくさい絵柄は気になるかもしれません。ただ、絵空物語でなく、厳しい現実の反映なんだと教えるためにはやはりこういうキャラクターになるんだろうなあ。
【2017年に観た映画の最新記事】