2017年10月15日

あゝ、荒野

 寺山修司原作の小説を2020年東京五輪後のやさぐれて東京に舞台を移して映画化。前編だけで2時間半以上の力作で、ザラザラとした、この手の邦画好きにはたまらない作品です。

  作品情報 2017年日本映画 監督:岸善幸 出演:菅田将暉、ヤン・イクチュン、ユースケ・サンタマリア 上映時間:157分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:イオンシネマ港北 2017年劇場鑑賞184本目



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 【ストーリー】
 2021年の新宿。少年院帰りの新次(菅田将暉)は、自分を罠にはめた不良仲間の祐二(山田裕貴)のところに復讐へ行くが、ボクシングを始めた祐二にコテンパンにやっつけられる。偶然、その場に居合わせた日韓ハーフで床屋に勤める健二(ヤン・イクチュン)とともに、小さなボクシングジムのオーナー、堀口(ユースケ・サンタマリア)にスカウトされる。健二は酒乱の父・建夫(モロ師岡)の虐待に苦しんでおり、2人はジムに泊まり込みながらボクシングを始める。

 信次は娼婦ながらホテルで男から金を盗む芳子(木下あかり)の被害に遭うが、昼間ラーメン屋で働く彼女と再会して意気投合。恋仲に陥る。そのころ、名門大学に通う川崎(前原滉)は、自殺者の遺族を集めて自殺防止のイベントを計画していた。集まった恵子(今野杏南)らは、自殺をしようとした建夫をとめようとする。

 【感想】
 前編をみると、伏線を張り巡らせすぎてどうなるのかわくわくします。メインのストーリーである新次と健二のボクシング。それとまったく別個に広がっていく自殺研究会の面々。一応、建夫でつながっていますが、後半、それぞれどんな展開をみせるのか、想像もつきません。

 原作が寺山修司ということもあり、昭和のにおいがぷんぷんします。おそらく、東京五輪のあとには不況がきて、貧乏人はますます貧乏になるという世の中を描きたいのでしょう。そうなると渋谷でも池袋でもなく、新宿という町がまさにぴったり。金持ちから貧乏人までありとあらゆる人々の欲望にまみれたこの町そのものが、まさに荒野であり、同時に登場人物の荒涼とした心も洗わしています。

 意外な再会や出会いが何回かあったりしますが、最後まで長丁場を飽きずに見せられたのは、菅田将暉とヤン・イクチュンの二人のただものならぬたたずまいでしょう。特に、狂犬のような新次に対して、「息もできない」とはうってかわって、どんくさそうな健二役のヤン・イクチュンですが、ところどころに得たいのしれない狂気をみせているのはさすが。

 さらに、芳子と新次のベッドシーンの野性味あふれること、まさに荒野に生きる野生動物の荒れ果てた心同士のぶつかり合いという感じで、エロとすさまじさと哀しさと、久々に激しい場面をみました。恵子や、健二と因縁あさからぬ関係にある京子(木村多江)も含めて、女性陣もそれぞれ、ザラザラとした生き方をみせているのも魅力的です。

 また、ユースケやトレーナー役のでんでんといった脇役もさすがで、ボクシングシーンはハリウッド映画にも負けないような、迫力あるものでした。こういう昭和のような手触りの作品を、真っ正面からみられるなんて、何ともたまりません。後編もまもなく始まるので、絶対にみにいくぞ。
posted by 映画好きパパ at 07:05 | Comment(0) | 2017年に観た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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