作品情報 2016年フランス映画 監督:ミシェル・ブジュナー 出演:アリックス・ヴァイヨ、ジャン=スタン・デュ・パック、シャルル・ベルリング 上映時間:89分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:シネマカリテ新宿 2017年劇場鑑賞245本目
ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください
にほんブログ村
【ストーリー】
落ちこぼれの少年ビクトール(ジャン=スタン・デュ・パック)はクラスのマドンナ、マリー(アリックス・ヴァイヨ)にあこがれるものの、優等生でチェリストとしても将来を嘱望されているお嬢様のマリーに手が届かないとあきらめていた。ところが、マリーのほうからビクトールに声をかけてくる。
有頂天になるビクトールは、マリーに勉強を教えてもらい、落ちこぼれも脱出。お礼にマリーのためにさまざまな世話をやく。ところが、マリーは目の病気で失明寸前。そのことをビクトールにも隠していた。ビクトールは自分のことを盲導犬のかわりに扱われたと思い、傷ついてひどい言葉を投げつけてしまう。
【感想】
ビクトールはかわいらしいルックスだけど、クラスメイトで恋のライバルのロランに比べると、子供っぽい。一方、マリーもお嬢さんぽい雰囲気があるけど、絶世の美少女という
わけでもありません。下層階級の男性をお嬢様が好きになるという話はよくあるけど、この2人の組み合わせならすんなりと入ってこれました。
話のバックにあるのはフランスの多文化社会。大金持ちのマリー家と、シングルファザーの自動車修理工に育てられているビクトールでは住む世界が違います。けれども、それで特に大きな壁ができるわけでありません。また、ビクトールの親友で恋も応援してくれるハイカム(アントワーヌ・コルサン)は、父がイスラム教徒、母がユダヤ教徒という複雑な家庭。でも、白人のビクトールやマリーと仲良く楽しみます。もちろん、ジュニア向け小説が原作だから理想っぽく書いているのだけど、身分、家庭、人種などが障害にならず、自然に溶け込んでいるのがいいなあ、と思いました。
それでいて、まだ精神が未発達の二人は、自分の本心と逆のことをいって相手を傷つけたり、端から見れば、迷惑としか思えない行為を、相手のためだと思ってやってしまうこともあります。でも、失敗を通じて成長するとともに、失敗しても純粋に相手のことを思いやる大切さを理解するというのが本当に美しい。
さらに、マリーの父(シャルル・ベルリング)とビクトールの父(パスカル・エルベ)が、それぞれ違ったやりかたで子供を愛していて、時にはそれが子供の成長の妨げになっているのが興味深い。マリーの父は、治療最優先で、学校もチェロですらも取り上げようとします。でも、マリーにとってそれは生きる証しなのです。一方、ビクトールの父は、普段は彼のことを一人前に扱うくせに、ビクトールの母のことになると口を濁します。この2人の父親が、自分の子供たちの成長を通じて、変わっていくのもすばらしい。親子というのは、互いに良い刺激になれるということを十分だしています。
終盤、2人が大きなピンチを迎えたとき、主要登場人物がそれぞれいろんな行動をとります。それまでに短いながらも各キャラクターが生きていたために、みんなそれが納得できるのです。説明しすぎなくても脇にいたるまでキャラクターをうまくたてて、見事な展開。とにかく愛おしくなる小品でした。
【2017年に観た映画の最新記事】