2018年01月07日

婚約者の友人

 フランス映画の監督のなかで、フランソワーズ・オゾン監督は一見、取っつきやすく見えて、実は深い洞察が必要という僕好みの監督。昨年見そびれたものを正月早々、観られて超ラッキーでした。

 作品情報 2016年フランス、ドイツ映画 監督:フランソワーズ・オゾン 出演:パウラ・ベーア、ピエール・ニネ、アントン・フォン・ルケ 上映時間:113分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:渋谷アップリンク 2018年劇場鑑賞2本目



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 【ストーリー】
 第一次大戦直後のドイツの田舎町。アンナ(パウラ・ベーア)は婚約者のフランツ(アントン・フォン・ルケ)が戦死したため、生きる気力を失っていた。ある日、フランツの墓に見慣れぬフランス人が墓参りをしながら涙をこぼしているのを見つける。

 その青年、アドリアン(ピエール・ニネ)は、戦前、フランツがフランスに留学していた時の親友と名乗り、当時のフランツの思い出を語ってくれるアドリアンを、アンナとフランツの母マグダ(マリー・グルーバー)は歓迎。最初は敵国人だと拒否していたフランツの父ハンス(エルンスト・シュトッツナー)も次第に打ち解けていく。知的で優しいアドリアンはまるでフランツの生き写しのようだった。アンナはだんだん彼に惹かれていくのだが…

 【感想】
 丁寧にねられたストーリーに、予告編やネタバレの解説などみず、作品をまっさらな状態でみるのが一番良いでしょう。あまりネタバレしないようにしますが、戦争の悲劇、愛とは何か、噓とは何かという3つの大きなテーマが、絡み合いながら流れていきます。

 まず、戦争の悲劇について、大げさに反戦を訴えるような台詞はありません。けれども、フランスとドイツという隣国で、文化的な交流もありながら、歴史的に何回も戦争相手となった歴史が大きく横たわっています。フランツもアドリアンも、戦争にかり出された何十万、何百万という兵士の一人にすぎません。みんな家族もいれば、愛する人もいたでしょう。残された者が、相手を憎めば、その憎悪の連鎖はいつまでも続くわけです。

 ハンスがアドリアンと親密になるにつれ、狭い町で浮き上がっていく様子は、その後の第二次大戦の勃発を知っている僕らにとってみれば、やはりなという感じはします。しかし、オゾン監督はフランス人ながら、アンナがフランスに旅行いった際に、ドイツ人であるがゆえに、フランス人に何をされるかわからない恐怖というものもきっちりと描いています。戦争で多く死んだ兵士は若者です。子供や恋人を亡くした悲しみを遺族は抱えますが、けれども、若者を戦地に送り出した銃後の人たちはどうなのか、ということも考えさせられます。

 さらに、フランツを失ってあれほど嘆き悲しんでいたアンナが、徐々にアドリアンに惹かれていく様子は、愛とは何かをやはり考えさせられます。このへんはフランス映画というのはうまいですねえ。人が人を愛する意味というのはなんなのか、ラストのカットのとらえかたによって、見方は大きく変わるでしょう。噓についても同様です。

 ほとんどの場面はモノクロでとられ、ごく一部だけカラーになりますが、この使い分けも含めて、美術は完璧といっていいほど。100年前のドイツの田舎町や美しい田園風景、パリの猥雑な雰囲気など絵画のように美しい。効果的なクラシックも含めて、これほど美しい作品はなかなかないでしょう。

 さらに、パウラ・ベーアの美しさが半端ではない。撮影時は20歳そこそこの、ドイツの新人女優ですが、未亡人としての貞淑さ、人生への絶望、そしてそこから徐々に人間らしい、女性らしい感情を取り戻していく様子など完璧です。若い頃のニコール・キッドマンに似ている美女で、今後の活躍が楽しみです。国籍は違いますが、オゾン監督の新しいミューズになればと思います。
posted by 映画好きパパ at 08:06 | Comment(0) | 2018年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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