2018年02月06日

ロング,ロングバケーション

 施設にいれられそうになった認知症の夫と末期がんの妻が、人生最後の自由を満喫しようとするロードムービー。長年連れ添った老夫婦ならではの深い愛情と老いることの残酷さを描いた傑作です。

 作品情報 2017年イタリア、フランス映画 監督:パオロ・ヴィルズィ 出演:ヘレン・ミレン、ドナルド・サザーランド、クリスチャン・マッケイ 上映時間:112分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズららぽーと横浜 2018年劇場鑑賞27本目 



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 【ストーリー】
 時々記憶がよみがえるまだら状態の認知症になった夫・ジョン(ドナルド・サザーランド)と最後の旅行に出ようと、妻のエラ(ヘレン・ミラン)は若い頃の家族の思い出が詰まったおんぼろキャンピングカーで出発する。目的地は国語教師だったジョンと一緒に行くのが夢だったヘミングウェイの生地・フロリダ州キーウエスト。アメリカを縦断する旅行が始まる。

 何も聞かされていなかった息子のウィル(クリスチャン・マッケイ)と娘のジェーン(ジャネル・モロニー)はびっくり仰天。だが、ジョンとエラは子供たちに居場所も告げずに悠然と旅行を続ける。それは元気な時には想像もできなかった騒動を巻き起こしていく。

 【感想】
 お互い残された時間がわずかしかないと分かっている老夫婦が、人生最後の思い出作りに出発します。認知症といえども自動車の運転はしっかりできるジョンと、それを支えるしっかりものの妻エラ。ジョンの記憶がはっきりしているときはいいですが、ぼけているときは、交通警官との会話もへんなふうになってしまい、エラはてんてこまい。途中のガソリンスタンドで置いてけぼりされてしまい、慌てて、そのへんにいたライダーの後にのって追っかけるなど、これまでの人生では経験できない冒険をすることができました。そのドタバタぶりはみていてほっこりします。

 キャンピングカーで若い頃家族でいったキャンプ場に泊まりながらの旅行です。これもジョンの記憶がしっかりしているときはいいのですが、古い家族写真のスライドをみても、顔も思い出せないほど症状が重くなることもあり、エラのイライラと、それでもジョンへの思いがそれをとどめているのをみると、なんともやるせない気持ちでいっぱいです。僕が年をとったときにどんな夫婦になっているのかな。

 子供たち2人の心配もわかりますが、やはり最後は気ままにいきたい。ぼけていたはずのジョンがジューンへ電話で温かい言葉を話す場面は思わず涙がこぼれそうになりました。一方、気の強いエラは、実際に回りにいたら迷惑な感じ。今回の旅でも、運転手や介護施設の受付の人など、2人の旅行に何ら関係ない人が迷惑を被るというのも、ある意味リアルです。終盤からラストにかけての展開も老いることの残酷、皮肉、美しさがあますことなく描かれています。

 また、アメリカのさまざまな断面を浮き彫りにしているのもいい。2016年のロケだったため、トランプの支援者のデモの様子が流れます。北部のインテリのジョンは現役時代民主党支持だったのに、認知症になると支持者と一緒にトランプコールをするというのはすごい皮肉。あるいは、エラがバカにしていたジョンのヘミングウェイへの熱い思いを黒人のウエイトレスが理解してくれたり、シリア人のタクシー運転手が親切にしてくれたり、イタリア人監督ということもあり、それでいて、白人の強盗に襲われるのですから、人種の多様性こそアメリカの強みということが、背景にながれている気がします。

 ヘレン・ミレンとドナルド・サザーランドというと、社会的地位があったり、強面の役が多かったけど、こんな古き良きアメリカを体現する老夫婦も演じられるというのは、さすがは名優同士といったところでしょうか。ウェットになりすぎず、でもクールになりすぎずというパオロ・ヴィルズィ監督の演出にもうまくはまっていました。
posted by 映画好きパパ at 07:23 | Comment(0) | 2018年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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