作品情報 2017年日本映画 監督:福澤克雄 出演:阿部寛、松嶋菜々子、伊藤蘭 上映時間:119分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズららぽーと横浜 2018年劇場鑑賞28本目
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【ストーリー】
東京のアパートで女性(中島ひろ子)の絞殺死体が見つかった。部屋の住人の越川睦夫という老人が行方不明のまま、捜査線上に美しい舞台演出家、浅居博美(松嶋菜々子)がのぼった。被害者が生前、上京してわざわざ彼女に会いにきたことが判明したのだが、博美には完璧なアリバイがあった。
一方、博美と旧知の仲の日本橋署の刑事、加賀恭一郎(阿部寛)は、越川の部屋から見つかったカレンダーのメモを聞いて驚愕する。それは、加賀を捨てて孤独死した母親の百合子(伊藤蘭)の遺品と同じものだったのだ。今回の殺人と加賀の過去の関係はいったい…
【感想】
過去作で少しずつ明かされていった加賀の家族関係、厳しい捜査の鬼だった父(山崎努)と、夫と子供を捨てていった母の悲しい過去が本作で明らかになります。それと同時に、ヒロインの博美の悲しい過去と、それにとらわれた現在の姿も浮かび上がる仕組み。悲惨な過去にも負けずに現代は芸術家として活躍するというのは「砂の器」の和賀(加藤剛)に通じるものもあるし、子供時代の逃避行というのはまさに同じ。博美の子供時代の桜田ひよりの好演もあり、まさに落涙必死の作りとなっています。
自らの過去をひきずりながら、名刑事として活躍する加賀も、自分と相通ずるものを博美にみたのでしょう。この2人のある意味、同志とも好敵手ともいえる関係は、松島しかいないといえる凜とした美しさもあり、本作最大の魅力になっています。わずかな手がかりを追って捜査に奔走する加賀や、ドラマからずっとコンビを組んでいる松宮(溝端淳平)、加賀の父親の介護をした金森(田中麗奈)の存在感も、過去作から見ているファンとしてはうれしい限り。
一方、トリックのほうはかなり強引。加賀以外の警察がいかにも無能にみえるし、そんなに何年も前の記憶があてになるかといいたい。また、殺人という手段があまりにも簡単にとられてしまうというのは、いかにも作られたお話ぽく、そこが残念だったかな。
出番は少ないけれど、飯豊まりえと及川光博の使い方も良かったし、伊藤、山崎、小日向文世といったベテランはさすがでしたし、脇に至るまでキャスティングはお見事でした。エンディングロールには、ノンクレジットですが、テレビ版で重要な役割をした香川照之と杏も登場しており、贅沢な作品でした。BGMの使い方や、最初は多用しすぎと思った字幕の使い方も含めて、ちょっとレトロな、でも堪能できる邦画です。
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