2018年02月08日

デトロイト

 1967年のデトロイト暴動を舞台に、アメリカの暗部をえぐり取ったキャスリン・ビグロー監督の秀作。ただ、40分に及ぶ拷問シーンは、正直、疲れました。今も同様のことが起きるのが怖いですね。

 作品情報 2017年アメリカ映画 監督:キャスリン・ビグロー 出演:ジョン・ボイエガ、ウィル・ポールター、アルジー・スミス 上映時間:142分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズららぽーと横浜 2018年劇場鑑賞29本目



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 【ストーリー】
 1967年、デトロイト警察が黒人が利用する違法バーを摘発したことにより、普段から押さえつけられていた黒人の怒りが爆発。暴動となり、ついには州軍が出動する事態となり、町は戦場のようだった。

 その晩、黒人宿泊客が多かったアルジェモーテルから警官隊に向けて発砲があった。それは宿泊客の一人クーパー(ジェイソン・ミッチェル)がいたずらでおもちゃの銃を発砲しただけだったが、警官隊は狙撃手がいるとモーテルになだれこむ。そして、もともと容疑者に暴力をふるう傾向のあったクラウス刑事(ウィル・ポールター)は、たまたま居合わせた歌手のラリー(アルジー・スミス)ら8人の客を拷問にかけ、狙撃手がだれかを白状させようとする。警備員のディスミュークス(ジョン・ボイエガ)は事態を収拾しようとするのだが…

 【感想】
 デトロイト暴動にしても僕の生まれていないころであり、この映画をみるまで知りませんでしたが、黒人たちが押さえつけられる怒りと、暴徒と化す様子。それを十分に取り締まれず不満がたまっていく警官の心理が丹念に描かれており、ついにアルジェモーテル事件で爆発したということがよくわかります。クラウスたちがやりすぎと思う人は州兵や州警察にもいましたが、事なかれ主義で止めなかったことから事態はどんどん悪化していきます。

 さらに、白人の若い女性が黒人客と遊んでいたことが、警察の怒りをあおりました。人種差別意識が強いうえに、この非常時に何をしているんだといういらだちが止められなかった。そして拷問を続けるうちに、どんどん心理的にもエスカレートしていく様子も、人質のように警官に拷問される宿泊客たちの恐怖も、ストレートに観客に伝わってきて、嫌な気持ちのままずっとさせます。警官たちも途中で引き返すチャンスがあったのに、人間の極限状態の愚かさというのは目を覆いたくなりますし、こういうことは洋の東西を問わずあるのでしょう。

 暴動が落ち着いた後、裁判になりますが、これも非常に後味が悪い。陪審員は白人ばかりですし、客観的な証人であるディスミュークスは命の危険すら感じます。このあたりのアメリカの不公正というのを、荘園からどっしり描いているビグロー監督の骨太さというのは、ハリウッドでも随一ではないでしょうか。

 2009年に丸腰の黒人が警官に射殺されたフルートベール駅事件も映画になりましたが、結局、黒人が大統領になっても、半世紀近くたっても、アメリカの人種差別というのが収まらないというのは恐ろしい。エンドロールで、主な登場人物のその後が書かれていますが暗澹たる気持ちになります。ただ、日本人の感覚からすれば、おもちゃの銃で発砲したことをすぐに告げればいいし、関係ないところを略奪するというのも、そりゃだめだろうといいたくなりましたが。

 スターウォーズシリーズで注目を集めたジョン・ボイエガが主役扱いになっていますが、この映画で一番の見所はウィル・ポールターの狂気の演技でしょう。なにもなければ職務熱心だけど、有事の際に心の中にあった差別意識が膨らみ、とんでもない暴力事件を起こしてしまう。あせって証拠を隠滅しようとする小物ぶりを含め、悪事というのは、ごく普通の人間でも起こすことを体現していました。
posted by 映画好きパパ at 06:55 | Comment(0) | 2018年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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