3部作って3作目はたいてい失速するのですが、本作は見事にホップ、ステップ、ジャンプを決めました。青春映画の金字塔と呼ぶのにふさわしい、爽やかで切ない珠玉の作品になりました。
作品情報 2018年日本映画 監督:小泉徳宏 出演:広瀬すず、野村周平、新田真剣佑 上映時間:128分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ渋谷 2018年劇場鑑賞78本目
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【ストーリー】
ちはや(広瀬すず)と太一(野村周平)が作った都立瑞沢高校かるた部。ちはやたちは3年生になり、新入部員の筑波(佐野勇斗)と菫(優希美青)も入部。高校生活の最後に悲願の全国制覇を目指すのだが、太一の顔は晴れない。幼なじみで福井の藤岡東高のエース新(新田真剣佑)がちはやに告白したことを知ったのだ。
東大を目指す太一は、かるたが受験勉強の重荷にもなり、かるたを続けるべきか迷いがしょうじる。一方、新もちはやと太一の活躍を知り、高校でカルタ部を創設し、全国大会出場を決めた。果たして日本一の座は、そして3人の恋と友情の行方は…
【感想】
上の句、下の句とも傑作でしたが、本作は太一に思い切りフォーカスしています。高校生活最後の年は部活の集大成であるとともに、大学受験という今の日本では一生を左右する重大なイベントもまっています。さらに、ちはやが好きなのに言えないまま、親友でライバルの新に先を越されてしまった自分のふがいなさ。部活、恋、勉強と青春時代が盛りだくさんがゆえに、悩みも大きくなります。
太一の救いとなったのはかるたの永世名人・周防(賀来賢人)でした。句が詠まれる前の音でわかってしまう天才ですが、それはある犠牲と引き替えであり、周防自身はかるたをとりわけ好きというわけではありませんでした。太一の迷いは周防に気に入られて、周防のストイックな生き様が迷いをふっきっていきます。正直、チャラい役が多かった賀来賢人に周防のような一種の剣豪の用な役ができるとは驚きました。
一方、随所で笑いをとるのも本作の特徴です。天才が故にどこかぬけている周防や、かるたでちはやを破るほどの腕前ながら、兄と慕う新にふられっぱなしの伊織(清原果耶)、そして、シリーズを通してちはやの前に立ちふさがるかるたクイーンの詩暢(松岡茉優)の脳天気なツンデレぶり。シリアスな悩みとユーモアが絶妙な配合になっており、非常にみやすくなっています。
そして前2作でキャラを確立した脇役たちも、出番は少ないながらしっかりと存在をみせます。1作目で下手なゆえにコンプレックスを感じていた机くん(森永悠希)、どんなときもムードを盛り上げる肉まんくん(矢本悠馬)のコンビや、日本文化の深い知識がみんなを導く奏(上白石萌音)といったカルタ部の面々が、かゆいところに手が届くような役割を演じてくれます。
さらに、本作は青春の美しさというものに目を向けてくれました。原作が未完ということで、映画がどういう完結をするかが注目されましたが、一瞬を永遠にするために、人をつなぐことの重要性を押しつけがましくなく描いています。試合で敗退したライバル校たちの様子を、短いショットながら映し出すことで、青春というのは努力した人だれにでも訪れるものであり、かけがえのない尊さであるというのを表してくれました。
そして、何より競技カルタの魅力。今作は「ちはやふる〜」ではない別の2首がフォーカスされています。そして、太一と新がそれぞれの句の意味をなぞらえたような行動をとります。平安時代の歌合わせの知識があればたまらない設定です。僕は知らなかったので後で調べたけど、1000年前の人間も今の人間も思いは変わらないということが強く訴えかけてきました。これで完結というのは寂しいけれど、その寂寥感も含めて、完璧な完結編になっています。
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