作品情報 2017年アメリカ映画 監督：クレイグ・ギレスピー 出演：マーゴット・ロビー、アリソン・ジャネイ、セバスチャン・スタン 上映時間：120分 評価★★★★★（五段階） 観賞場所：TOHOシネマズシャンテ 2018年劇場鑑賞107本目
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【ストーリー】
貧困家庭に生まれながら、フィギュアスケートの才能をめきめきと発揮したトーニャ・ハーディング（マーゴット・ロビー）。幼い頃から、母親のラヴォナ（アリソン・ジャネイ）に情け容赦ない体罰を受けながら、スケートを特訓する。その成果もあり、アメリカで初めてトリプルアクセルを決めて、全米の頂点にたつ。
しかし、ラヴォナのところをでて、結婚した夫のジェフ（セバスチャン・スタン）はとんでもないＤＶ男。しかし、トーニャの負けん気もなかなかのもので、夫婦げんかは銃やナイフが飛び交う派手なもの。離婚後もつかずはなれずの２人だったが、1994年のリレハンメルオリンピック代表選考会となる全米選手権を前に、ライバルのナンシー・ケリガン（ケイトリン・カーヴァー）と差をつけられるばかり。トーニャに脅迫状が送られたのをみたジェフは、友人で裏世界に通じているというショーン（ポール・ウォルター・ハウザー）のアイデアで、ケリガンに脅迫状を送ろうとするのだが…
【感想】
この映画で描かれたことが真実かどうかはわからず、そのことは映画でもうたっています。架空のインタビューもまじえながら、トーニャとジェフの証言が食い違うところは、画面が二分割されて、互いの矛盾ぶりをさらけだしたりしています。
とはいえ、幼く純真だったトーニャ（子役のマッケナ・グレイスが何ともキュート）が、練習中はトイレにもいかせてもらえず、同年代の選手と話すことも禁じられ、しまいには父親を追い出してしまうラヴォナの毒親ぶりで、ふてぶてしく成長するのは何とも悲しい。さらに、金持ちが集まるフィギュアの世界で、衣装が買えずに父親が撃った兎の毛皮を手縫いで試合の衣装に仕立てて、周りからバカにされるシーンは彼女の過酷な運命に同情してしまいます。いかに才能があっても周囲に理解者がおらず、貧困のままだとどうしようもないというのもアメリカの一つの現実なのでしょう。
また、ジェフやショーンといった周りの男たちのダメダメぶりも目を覆うばかり。一見優しくていい男ながら状況に流されすぐに暴力をふるうジェフ、デブで引きこもりのくせに、自分は国際諜報機関とつながりがあるという妄想の世界に入っているショーン。もし、母親から独立した後、まともな男と出会っていれば、もっとまともになっていたろうに、周りはバカばかり。やはり貧困層から抜け出すのは難しい。
一方、フィギュア界も腐っており、特に芸術点という主観が入るため、片親でふてぶてしいトーニャは存在するだけで減点対象。これは、彼女じゃなくても怒り狂いますわな。アメリカは強くて美しく正義の国という建前で、内実がいかに狂っているのかがよくわかります。家族の絆が大切というアメリカで、クライマックスでの母子のシーンは、あまりにも皮肉で、かつ、現実はそういうものなのでしょう。
マーゴット・ロビーはスケートを猛特訓しており、SFXでごまかしているシーンもありますが、氷上での毅然とした表情、母、夫ら肉親からの理不尽な仕打ちに対する怒り、そして、リレハンメル五輪での有名な抗議シーンなど、スケート界のスターとしてのオーラをだしきっていました。そして、何よりアカデミー助演女優賞を受賞した、アリソン・ジャネイの毒親ぶりもみごと。第四の壁を破るという登場人物が観客に語りかける手法もあり、80年代のアメリカ音楽も含め、ポップな傑作に仕上がっていました。
【2018年に見た映画の最新記事】
スケート大会で彼女が選択した音楽、 ZZトップ！ に爆笑でした！
好む曲でクラシックの真逆だそうですね。そういう選曲も実話らしいです