作品情報 2017年アメリカ映画 監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン 出演:ジェイク・ギレンホール、タチアナ・マズラニー、ミランダ・リチャードソン 上映時間:119分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズシャンテ 2018年劇場鑑賞116本目
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【ストーリー】
2013年のボストンマラソン。スーパーの店員ジェイク(ジェイク・ギレンホール)は別れたばかりの元カノ、エリン(タチアナ・マズラニー)とよりを戻そうと、彼女が出場するボストンマラソンに応援にいく。だが、そこで爆発事件が起きて、意識不明、両足切断の重傷を負う。
翌日、病院で意識を取り戻したジェイクは、現場でみた怪しい男の特徴をFBIに告げ、それが犯人特定の手がかりになった。そのことでジェイクは一躍、全米のヒーローになる。世界中から手紙が寄せられ、町に出れば一緒に写真を撮ってほしいといわれ、テレビからは出演依頼が殺到。シングルマザーとしてジェイクを育てた母パティ(タチアナ・マズラニー)は大喜びするが、ジェイクは英雄として行動しなければならないことに疲れ切っていた。そのことを理解していたのはエリンだけだったが…
【感想】
いい年して母親と同居し、しがないスーパーの店員という典型的な負け組のジェイク。なじみの酒場で似たような境遇の幼なじみや親戚と酔っ払い、レッドソックスの熱狂的なファンというどこでもいそうな男が、突然ヒーローになってしまいます。
ヒーローになったゆえに、人前で気軽に好きなことはできないし、よってくる人も好き勝手にいって、中には政府の陰謀説を唱えてひどい言葉を投げつける輩も出てくる。一方、両足切断で、最初は車いす、やがて義足となったジェイクにとり、自分の足で二度と歩けず、風呂やトイレも一人ではできないことは屈辱でしか有りません。狂気の演技をすればハリウッド一のジェイク・ギレンホールだけあって、ごく普通のジェイクがどんどん、焦燥して人格が変わっていく様子を丹念に伝えています。
母親のパティはじめ、親戚・友人も気はいいけどデリカシーのかけらもない。まさにアメリカの労働者階級の嫌な部分も良い部分もでているといったところ。ジェイクが甘えて、自分の不安や怒りをぶつけられる相手はエリンしかいないのだけど、エリンもごく普通の女性でしかなく、ジェイクを気遣いつつも、悪口を浴びせられると我慢の限界になる。中盤、2人の間に大きな亀裂が入る場面は、どちらの気持ちも痛いほど伝わってきて、本当に涙が出そうになりました。
しかし、ここからジェイクが徐々に立ち直っていくときに出会う人々は、アメリカの善意の象徴であり、制作側も原作者であるジェイクも、アメリカに対して絶大な信頼を置いていることが分かります。「アイ、トーニャ」「サバービコン」と並べてタイプは全然違っても、アメリカの嫌なところ、良いところをそれぞれ本音で描いている作品の系譜といえましょう。
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