2018年07月22日

ラッカは静かに虐殺されている

 シリアの地方都市でISに占拠されて首都とされたラッカ。外部への情報がシャットダウンされるなか、市民がレポーターとなりISの目をかいくぐって命がけの情報発信をした実話のドキュメンタリー。マスゴミといわれる報道があふれる日本では想像もつかない、報道の自由の大切さがわかります。

 作品情報 2017年アメリカ映画ドキュメンタリー 監督:マシュー・ハイネマン 上映時間:92分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:渋谷アップリンク 2018年劇場鑑賞164本目



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 【ストーリー、感想】
 アラブの春でシリアの自由化を求めるきっかけとなった都市ラッカ。だが、2013年12月、ISが侵攻し、翌月にラッカを占領。その後、首都にしました。食料、燃料などは不足し市民は餓え、ISは公開処刑を次々に行います。外部へはISのプロパガンダ放送のみが公開され、そこではラッカは楽園のように描かれていました。

 ラッカにいるごく普通の大学生、教師らの中から市民記者になり、スマートフォンでラッカの様子を撮影し、ネットで外部に真実を知らせる活動が始まりました。彼らはRBSS(Raqqa is Being Slaughtered Silently/ラッカは静かに虐殺されている)と名乗り、彼らが撮影した映像はアラブ社会のみならず、欧米のテレビ局でも放映されました。

 これに対してISは激怒し、メンバーを見つけ次第処刑。危険をかんじたメンバーの一部はトルコに逃れたものの、そこでも暗殺事件が起き拠点をドイツに移します。残された家族がISに処刑されるメンバーもいました。文字通り、命がけで真実を伝えるRBSSのメンバーたち。

 ラッカで公開処刑されている映像や戦闘の様子はフィクションではなく、本物です。ISに逮捕される寸前まで、スマホで録画しているメンバーもいました。けれども、彼らは自分たちの町や家族を救うために、普通の人でもできることとして、ニュースをラッカから送り続けます。それがなければ、ISの一方的な映像だけが流され、外国の人間がラッカの悲惨な実情を知ることがなかったでしょう。

 現地の緊迫した映像だけでなく、ドイツにいっても移民として排斥されるヨーロッパの現実もまた映し出します。力だけが正義の国際社会といえども、国際世論の高まりは重要です。メンバーや家族を何人もなくしつつ、それでも取材、放送をやめなかった彼らこそが真のジャーナリストであり、彼らのような存在がなくてはならないということがよく分かります。ペンは剣より強しという言葉をまさに体現しています。

 真面目な話だけでなく、赤ちゃんがうまれる温かい場面や結婚式の賑やかな映像などもまざっています。ラッカはようやく昨年になり、犠牲をはらいながらも解放されました。しかし、劇中のナレーションにあるように過激思想は死なないし、ドイツでの反移民デモにみられるように黒い怨念のようなものはなくならないのでしょう。もやもやしつつも、その一方でごく普通の人たちがRBSSで活躍したということが、一筋の光のようにみえました。
posted by 映画好きパパ at 06:48 | Comment(0) | 2018年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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