作品情報 2017年日本映画 監督:内藤瑛亮 出演:山田杏奈、清水尋也、大谷凜香 上映時間:114分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:渋谷アップリンク 2018年劇場鑑賞165本目
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【ストーリー】
雪国の地方都市に東京から転校してきた中3の野咲春花(山田杏奈)は学校で執拗ないじめにあっていた。クラスのリーダー、小黒妙子(大谷凜香)を中心とするいじめは日に日にマスばかり。それでも、同じ転校生の相場晄(清水尋也)が見守ってくれるのが唯一の支えだった。
春花と晄が出かけているときに、春花の家が火事となり両親が死亡。幼い妹の祥子(玉寄世奈)も意識不明の重体になる。火事がクラスメイトの放火だと知った春花は、壮絶な復讐をはじめる。
【感想】
いじめは不条理なもの。ここに出てくるいじめる側は家庭に問題があったり、閉鎖的な田舎にうんざりして、東京の象徴といえる春花を標的にしたりするけど、どんな理由があっても一線を越えてはならない。けれども都市、田舎にかかわらずいじめがなくならないというのは、自分の弱い心やねじくれった優越感を示さずにおられない愚かさが蔓延している証拠なのかもしれません。
この作品が今の日本をうまくすくい上げてるなと思ったのは、妙子は春花のいじめに直接手を下さないけど、周囲が妙子の意向を勝手に忖度して、しかも妙子への忠誠心を来そうかのようにいじめをエスカレートしていく構図です。中でも春花が来る前にいじめの標的となっていた佐山流美(大塚れな)は、自分が再びいじめの標的になりたくないという理由と、妙子への異常な執着から、春花の家への放火を提案します。
春花の家にいったいじめっ子グループも最初は脅かすつもりだったのが、これまた集団意識と興奮でどんどん過激になり、悲劇を起こすことになります。かれらのやったことは許されないけれど、これに類似した行動というのは多く見られるような気がします。また、担任の南(森田亜紀)はいじめに見て見ぬふりをします。これも、現実のいじめ事件で、学校がいじめの隠蔽に走る事例が数多くみられるのと同一。中学生に肉体的、精神的に負けること自体、教師として失格なのですけど、こういう教師も実際にいるのでしょうね。
精神的にどんよりくるいじめシーンが続いたらどうなるかと思っていたら、前半が終わらないうちに、春花の反撃ターンになります。スプラッタホラーのように、いじめた相手に復讐する春花をみているうちに、観客である僕も彼女と一体化して、ずたずたにされるいじめっ子たちに快哉を叫びたくなります。そういう自分でも普段は気にならない心の中の暴力性というのを実感させてくれました。警察が捜査しないことや、雪の中で都合良く武器がころがっているのをリアリティがないと一蹴するのは簡単です。でもノンフィクションではないし、いじめと、そもそもそれを引き起こす社会構造を露わにするのだから、デフォルメされた暴力とあわせて、この映画では必要なことではないでしょうか。しかし、自分が親の立場としてみると、子供がいじめられる側、いじめる側どちらにならないことを祈るしかありません。
なんと言っても映画初主演の山田杏奈のオーラがすごい。いじめられているときのどんよりとした表情、家族が火災にまきこまれたときの悲嘆、そして、復讐するときのぞっとするようなまなざし。女子の登場人物は美形が多いのですが、演技力、オーラという意味ではずばぬけていて、彼女だからこそ成り立ったともいえましょう。今は深夜ドラマで物議を醸している「幸色のワンルーム」にでていますけど、こういう美少女が歪んだ環境におかれても、凜としたたたずまいがあるという役柄にぴったりですね。脇の清水、大谷、大塚といったフレッシュな出演者たちも今後が楽しみです。
もう一つ、色づかいにこだわった映画で、純白の雪を染める鮮血のコントラストはひたすら美しい。春花の赤いコート、妙子の金髪といった少女たちのキャラクターにこだわったファッションも、途中で違う服を着る登場人物もあり、見応えがあります。劇場上映終了間近になってみたのですが、本当にラッキーでした。
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