作品情報 2017年日本映画 監督:湯浅弘章 出演:南沙良、蒔田彩珠、萩原利久 上映時間:110分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:新宿武蔵野館 2018年劇場鑑賞170本目
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【ストーリー】
海辺の小さな町の高校。新1年生の大島志乃(南沙良)は吃音に悩んでいた。案の定、最初の自己紹介で自分の名前すらうまく言えず、お調子者の同級生菊地(萩原利久)に突っ込まれ、笑いものになってしまう。
以来、孤独な日々を送っていた志乃だが、同じくクラスでだれともつるまない岡崎加代(蒔田彩珠)と、ひょんなことから友達になる。ミュージシャン志望でギターが弾ける加代は音痴なのが悩みだった。一方、普通の話はできない志乃は歌は上手。2人はデュオを組んで、路上で歌い始めるのだが…
【感想】
無理にドラマティックにせず、10代の多感なときだから感じる不安、喜び、悲しみといったものが、ストレートに伝わってきます。冒頭、志乃は自分の名前を言う練習を朝からずっとしてきます。しかし、自己紹介の順番が近づくにつれて高まる不安。そして、案の定、吃音のたえにいえなくなり、羞恥と自己嫌悪にいっぱいになり、さらに鈍感な男子の突っ込みで、楽しいはずの高校生活は惨憺たるスタートとなります。
クラスメイトは表だってイジメたりしません。けれども、なんとなく敬遠されて、昼食の時に志乃はぽつんとひとりぼっち。だれにも見つからない校舎裏で、架空の友達と話しながら、一人で食べています。そのときはちゃんとしゃべれるのに…という哀しさはなんともいえません。志乃が鼻水丸出しで泣くシーンは、みているこちらまで切なくなりました。
しかし、同じようにクラスで浮いている加代は自分の世界を持っている反面、自分の殻に閉じこもっていました。それが志乃との出会いによって、少しずつ変わっていきます。志乃にとって初めての親友だったように、加代にとってもそうだったのでしょう。中盤、2人が仲よさそうに音楽の練習をするシークエンスは、みていてほっこりしました。
そこへ異物として菊地があらわれます。実は菊地もいじめられていた経験があり、無理にお調子者のふりをしようとします。その彼の信条というのは、大人のぼくからみれば痛いほどわかるのだけど、これまで人と接することが苦手だった同い年の志乃にそれを求めるのが酷なのかな。ここらへんが男女の違いというか、あるいはウェルメイドを嫌った作風なのかしらないけれど、弱い者同士が傷つき合うって自分にはあわないんですよねえ。クライマックスも歌はよかったけど、そのあとはカタルシスを感じませんでした。
南沙良、蒔田彩珠とも今後が楽しみな若手女優。それぞれ欠点だらけで不安を持ちつつも精一杯いきている女子高生になりきっています。また、台詞がほとんどないけれど、存在感を示した渡辺哲のようなベテランの使い方もうまかった。小品だけど愛おしい作品でした。
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