2018年07月31日

菊とギロチン

 大正時代のアナーキストと女相撲を通じて、封建的な日本に圧殺される人々を取り上げている熱気あふれる作品。3時間を超える上映時間は長く感じませんでしたが、アナーキストたちの空虚さに女相撲の情念がうまくかみあってなかった気がしました。

 作品情報 2018年日本映画 監督:瀬々敬久 出演:木竜麻生、東出昌大、寛一郎 上映時間:183分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:テアトル新宿 2018年劇場鑑賞171本目



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 【ストーリー】
 関東大震災後の閉塞感あふれる社会。大阪を拠点とするアナーキスト集団、ギロチン社の中濱鐵(東出昌大)、古田大次郎(寛一郎)は革命資金を集めると称して、強盗や企業人の暗殺をしていた。捜査の手がせまり東京に逃げ出した中濱らは、虐殺された大杉栄の敵を取るため、東京のアナーキスト村木源次郎(井浦新)らと手を組んで、軍や警察上層部へのテロを計画する。

 一方、当時、全国を巡業する女相撲が地方で人気を呼んでいた。その一つ、岩木玉三郎(渋川清彦)率いる一座には過去にいわくがあり、ほかに行き場のない女性たちが流れ込んでいた。花菊(木竜麻生)も夫の暴力に耐えかねて逃げ出した一人。巡業先の船橋で、偶然、古田と出会ったことで、彼女の運命も変わっていく。

 【感想】
 口先ばかりで本当に世の中を変えたいのか、単に遊びカネがほしいのかわからないような中濱たち。テロもずさんなもので、こんなのに巻き込まれた被害者は可哀想ですし、薄っぺらさにあきれます。一方、女性の地位が今より低いなか、男社会に怨嗟を抱く者や逆にうまく利用しようと立ち向かう女力士たちのリアルな情念を丹念に描いている部分はすごい。

 もともと、風紀紊乱の恐れがあると警察や在郷軍人会から白い目でみられるなか、懸命に稽古に励む彼女たち。それでも、暴力夫に見つかったら警察につかまって無理矢理戻されてしまいます。さらに、朝鮮人の十勝川(韓英恵)は関東大震災後の虐殺を奇跡的に生き残った経験があり、刹那的生き方と日本人、特に軍、警察といった権力への怨念がかみあって、彼女の一代記をみたくなるほど。

 その朝鮮人虐殺、主導した飯岡(大西信満)らが、軍や警察にそそのかされて自分の手を汚したのに、震災が落ち着いた後は汚らわしいもののように共同体で孤立し、警察からも取り締まり対象になっている哀れさはなんともいえません。真に汚いやつは決して傷つかないのです。中盤、飯岡らが十勝川を拷問して、「天皇陛下万歳」と無理矢理叫ばせようとさせるシークエンスは、残酷ですが、弱者がさらに弱い者を痛めつけるという世の不条理さを実感させられました。この部分だけでも、観る価値があります。

 それに対して、中濱らの本当に軽いことよ。結局、60年代、70年代の学生運動もそうですし、今時点でもそうでしょうが、日本の左翼運動って、知識だけのインテリに主導されているから広範囲に影響を与えないのではと思えてなりません。そういう意味では、彼らの薄っぺらさはうまく描かれているといえるのですが。

 大手映画会社に断られたという難しい題材を執念で映画化した瀬々監督には頭が下がります。そして、俳優陣もその熱意にみごと応えています。東出はアナーキストで、女遊びも激しい中濱という、本人のCMイメージからすると大丈夫なのかと心配するような役柄ですが、自由奔放な中濱にみごとあっていました。そして、木竜、韓といった女力士たちのあふれんばりの肉体の躍動とむき出しの情念。こういうエネルギーが今の日本に必要なのでしょうね。

 ちなみに、中濱たちのターゲットになった正力松太郎は、警視庁幹部時代に朝鮮人暴動説のデマを流したとされています。この人が戦後、日本テレビ、読売新聞の社長となって、大事ににまでなるというのをみても、戦前と戦後は綿綿とつながっており、さらに、歴史が忘却の彼方になる最近の世相に鑑みると、こういう作品が今作られる意義は非常に大きいと思います。女相撲はそれこそ太古からあったし、そもそも日本の神道で一番偉い天照大神は女性なのに、女性を土俵にあげるのは不浄とかね。相撲協会の人にみてもらいたい。
posted by 映画好きパパ at 07:02 | Comment(0) | 2018年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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