2018年09月01日

検察側の罪人

 緊迫した社会はミステリーで豪華出演者の演技合戦はすごかったのだけど、ラストがちょっと肩すかし。左派的主張が気になっていましたが、それがバランスを崩してしまったように思えます。

 作品情報 2018年日本映画 監督:原田眞人 出演:木村拓哉、二宮和也、吉高由里子 上映時間:123分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズ渋谷 2018年劇場鑑賞197本目



 参加しました。下のボタンを励みのために押して頂ければ幸いです。



にほんブログ村 株ブログ 投資信託へ
にほんブログ村 株ブログ インデックス投資へ



 【ストーリー】
 東京地検刑事部に着任した若手検事沖野(二宮和也)は尊敬する先輩のエリート検事、最上(木村拓哉)とともに、蒲田で起きた老夫婦殺害事件の担当になる。すると最上は容疑者の一人松倉(酒向芳)という男にひどく反応する。松倉は、時効となった女子高生・由季(長田侑子)殺人事件の重要容疑者で、学生時代の最上は由季から慕われ、仲良くしていたのだ。

 一方、最上の同級生で国会議員の丹野(平岳大)は、日本の右傾化を止めようとしていたのを義父で次期総理候補の高島(矢島健一)にらまれ、闇献金疑惑をでっちあげられていた。丹野を助けながらも松倉を老夫婦殺害の犯人とにらみ捜査を指揮する最上。沖野の事務官の橘沙穂(吉高由里子)は松倉の異常性に驚きつつも、最上が松倉憎しで暴走しているのではと疑問を抱く。

 【感想】
 原田監督得意の、膨大な情報、セリフをコントラストのついた画面で流す作風は、ミステリーにはぴったり。聞き取りにくい台詞もありましたが、それもよりリアルに感じるわけです、本筋とは無縁なさりげないシーン、例えば東京地検で詩織さん事件とおぼしき事件の起訴を巡って論議するシーンがありましたが、現実的にあんな平場でやるわけがないのに、この物語世界にぴったりと溶け込んでいるので何ら違和感を感じません。

 そして、それを支えたのが主演、助演双方の好演でした。モンスターと呼ばれる松倉の猟奇性に対峙する沖野が、硬軟取り混ぜて自供を引き出そうとする。特に、たたみかけるように松倉を怒鳴ったりささやいたりして責めるシーンは二宮の演技の白眉でしょう。もちろんそれを受ける酒向の異常性の発露もたいしたものです。

 木村もスター性を保持しつつ、検事という法の下の正義と、自分の中の正義をどう折り合いつけるかの苦悩のしかたは見もの。特に中盤以降、震えながらのシーンは、スターという衣をかなぐりすてた一人の人間がまざまざと現れていて、一皮むけたと思えるところです。さらに、幼い頃に冤罪事件にかかわりをもち、検察の正義に疑問を持ちながらも事務官の仕事を続ける橘、闇社会の便利屋で人の良さそうな笑顔の下に不気味な衣をちらつかせる松重豊ら、キャストの演技のすごみに感心するばかりです。

 ただ、右傾化する国を止めようとする大風呂敷が入ってしまった終盤は、バランスが崩れてしまいました。スパイス程度だったらよいのですけど、右傾化する国というのも、実際にどんな陰謀があるかは、丹野と最上の会話でしかなく、薄っぺらくしかみえません。それを退治しなければならない巨悪にするのは、ちょっと苦しい。だから、ラストも非常に薄味、とってつけたようにみえてしまいました。

 共産党員だった山本薩夫監督の一連の社会派フィクションでは、政財官の癒着がこんなに醜く恐ろしいものだというのがユーモア交じりでたっぷり描かれ、これは退治しなければと観客にも思わせます。しかし、実在の事件っぽいはなしに触れつつ、結局、巨悪の描写がほとんどなく、あっても、謎の集団ダンスとかいうのではなあ。もう少し上映時間を長くするか、政治的な話ではなくて、検察的な正義と自分の正義という話にフォーカスすれば、近年まれにみるポリティカルフィクションになれたのに、あと一歩たりないという感じでした。
posted by 映画好きパパ at 07:22 | Comment(0) | 2018年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。