2018年09月20日

カランコエの花

 LGBTという言葉はずいぶん使われるようになりましたが、身近にそうした人がいるストレートの人ってどのくらいいるんでしょうか。本作はLGBTの当事者が主役でなく、ストレートの人たちの戸惑いを主役にした異色の作品。中編ながら青春映画としても高水準です。

 作品情報 2016年日本映画 監督:中川駿 出演:今田美桜、石本径代、永瀬千裕 上映時間:39分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:渋谷アップリンク 2018年劇場鑑賞211本目




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 【ストーリー】
 月乃(今田美桜)は田舎の高校の2年生。仲良しの母親(石本径代)から赤いシュシュをもらったのが気になっている。ある日、自習時間中に養護教諭の小嶋花絵(山上綾加)があらわれ、突如LGBTについての授業を行った。月乃は身近にLGBTがいないため、ぴんとこない。だが、お調子者の男子裕也(笠松将)が、このクラスにだけLGBTの授業があったのは、クラスのだれかがLGBTだからではと言いだし、クラスメイトの間に波紋が広がる。

 【感想】
 月乃も仲良しのクラスメイトたちも、LGBTを差別してはいけないという知識は頭ではわかっているけど、いざ、自分の身近な人間がそうだといわれるとどう接していいのかわからない。また、同質性の高い田舎だけあって、きもいと思っている内心がでてしまっている生徒もいる。ロケ地の学校が映画に全面協力しているだけあって、エキストラも含めて非常にナチュラルに高校生活を描いています。そもそも、この年代の生徒だったら同性への強い友情というのもあるわけですし、どこの高校でもありそうな話に仕上げています。

 小嶋はLGBTの生徒が傷つかないようにとの善意から授業を行ったけど、やりかたがまずかったし、担任の加藤(イワコウサトシ)もそれに輪をかけて配慮が足りませんでした。また根が善良な月乃は、赤いシュシュがよく似ているカランコエの花言葉のように、友人を守りたいと思います。けれども、どうやって守るかがわかりません。

 人間は多種多様だし、こうした問題にすべてに通用する正解はありません。配慮が足りないことは誰にでもあるし、LGBTがテーマになっていますが、実はコミュニケーションの不全という大きなテーマも内包しているといえると思います。まして、ちょっとした言葉で傷つきやすい青春期を描いているわけですから。以前、在日朝鮮人の大学生がずっと自分が在日であることを隠して、ようやく意を決して親友に打ち明けたときの反応にショックを受けたという話を何かで読んだことがあります。本当にコミュニケーションというのは難しい。

 また、短い上映時間にもかかわらず、エンドロールの工夫が素晴らしい。あれだけ輝いていた青春があっという間に色あせてしまうという残酷な現実を、あますところなくみせています。フィクションの世界とは言え、出てくるすべての登場人物が、ちゃんと立ち直り、元のような輝かしい生活が送れるように願ってしまいました。

 中編映画ということもあり、あっという間に終わってしまいます。このあとどうなるのか、中川監督は舞台挨拶で、自分では後日談はあるが、それは言わないで観た人で考えてほしいというようなことをはなしていました。正解はないけど、いつこういうようなことがあるかもしれない。だったらどうすれば良いのか、ちゃんと考える機会はなかなかないでしょう。今のところソフト化の予定はないそうですし、上映館も小規模ですが、同年代の高校生のみならず、多くの人に映画館でみてもらいたい作品です。
posted by 映画好きパパ at 07:35 | Comment(0) | 2018年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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