作品情報 2017年アメリカ映画 監督:バハラット・ナルルーリ 出演:ダン・スティーヴンス、クリストファー・プラマー、ジョナサン・プライス 上映時間:104分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ川崎 2018年劇場鑑賞300本目
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【ストーリー】
1843年、イギリスの作家、チャールズ・ディケンズ(ダン・スティーヴンス)はスランプに悩んでいた。新作の構想は浮かばないうえ、ぜいたくした借金を自分に押しつける父親ジョン(クリストファー・プラマー)が田舎から出てきて居候して大騒ぎ。とても執筆できる状況ではなかった。
それでもクリスマスを題材にした作品を書こうと、思いついたチャールズ。主人公の名前をスクルージと名付けたところ老人(ジョナサン・プライス)の姿で実体化した。チャールズとスクルージは会話をしながら執筆を勧めていくのだが…
【感想】
それまで、イギリスでもみんなで祝う風習があまりなかったクリスマスを、聖なる日として大々的に取り上げることになったのは「クリスマス・キャロル」がきっかけだそうです。もともとチャールズは、父親のせいでわずか11歳で工場に売られ、重労働をさせられた苦い思い出があります。父親ゆずりで贅沢をする一方、、貧しい子供をみたら援助をしたがり、ベストセラー作家なのに家計は苦しく、ローソクも最後まで使わないとだめなどドケチブリを発揮し、妻のケイト(モーフィッド・クラーク)を悩ませます。
この庶民性や、根にあふれる善人ぶりが、200年近くたっても世界中で読まれる名作を作ったわけです。しかし、映画では父親の上京によって当時のトラウマがよみがえり、悪夢にうなされる日々。つい父親につらくあたってしまいます。
また、執筆も親友のフォスター(ジャスティン・エドワーズ)の手助けはありますが、基本的には自分の作り出したキャラクターと対話しながら作るという独特の方法。そのため執筆中に邪魔されることを嫌い、部屋をノックした若いメイドのタラ(アナ・マーフィ)をクビにするなど傍若無人ぶりを発揮します。
そんな彼がスクルージの物語を書くうちに、自分自身の弱点、嫌なところに気づき、周りの人にやさしくなっていくところはいかにもクリスマスの物語。人間的に欠点はあるけど、真摯に執筆に取り組むチャールズを応援したくなります。そして、物語の裏にはこうした事情があったのかと、フィクションとはいえ、感心させられるできばえでした。
当時の激しい格差も描いており、金持ちが貧乏人の子供が死ねば口減らしになっていいと平然と吐き捨てたり、まだ幼い子供が借金が払えない親のために強制的に工場に売られたりといった場面が次々とでてきます。そうしたロンドンの貧しい庶民を温かく見守り、ペンの力で応援した事情がつまびらかになります。クリスマスが善意の日であるということを示したディケンズの功績は大きいでしょう。そして、この映画がそうした人間の善意はすてたものでないことを教えてくれます。
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