作品情報 2018年インド映画 監督:R・バールキ 出演:アクシャイ・クマール、ソーナム・カプール、ラーディカー・アープテー 上映時間:137分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズ川崎 2018年劇場鑑賞315本目
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【ストーリー】
インドの農村で機械工をしているラクシュミ(アクシャイ・クマール)は、毎月、決まった時期になると妻が屋外の狭い隙間に閉じ込められるのに気づいた。インドでは生理が不浄のものとされ、期間中、女性は閉じ込められ仕事や学校にも行けず、他の家族とも隔離されるのだ。
しかも、生理用品は高価で不潔な布で代用する人がほとんどで、感染症も蔓延していた。妻のガヤトリ(ラーディカー・アープテー)の体が心配なラクシュミは、手製の生理用品を作るが、失敗におわる。村中から、男のくせに生理を気にする気持ち悪いやつとバカにされ、ついには、家族からも見放される。莫大な借金を抱えたラクシュミに、思いかけないチャンスが巡ってきて…
【感想】
冒頭、ラクシュミとガヤトリの結婚シーンで、インド映画らしい音楽で歌いまくり、これは楽しい映画だろうけど、インド映画らしい現実離れしたものかなと思いきや、インドの厳しい現実と波瀾万丈なストーリーにびっくりしました。今までみたインド映画のなかで、一番、受け入れやすかったかな。実話をもとにしているというのにさらにびっくりです。
驚くことばかりなのですが、舞台が2001年というのにも驚きました。1970年代くらいのはなしかと思っていたのに、まさかほんの10数年前で、インドの生理用品の使用率はわずか12%しかなく、4億人以上の女性が苦しんでいるなんて、まったく知りませんでした。しかも、この映画ではインドで大ヒットしたものの、パキスタンでは上映禁止になっているとか。今なお、こうした女性差別が残っている世界の落差は激しい。
また、貧富の格差、知識の格差というものにも驚きます。村を追い出されたラクシュミは勉強したくてもお金が無く、大学教授の召使いになります。そこの小学生の子供に、生まれて初めてインターネットというものをみせてもらい、国際電話でアメリカの会社と英語で話すのを手伝ってもらいます。同じ国でもインテリ家庭では当たり前のことが、いい年した大人がインターネットにびっくりする。繰り返しになりますが、これが2001年というのです。こうした格差は当事者でないと気づかないし、日本でもそういうことがあるのでしょう。
さて、ここで生理用品の作り方のヒントをネットでみつけ、アメリカの会社に材料を発注するあたりから、プロジェクトX、下町ロケットぽくなります。だれもがバカにしているのに、妻の、ひいては女性の幸せを願って、何もかもうち捨てて研究に没頭するラクシュミ。女性用のパンティを履いて、そこに実際に動物の血を流して耐久実験するなど、こりゃ頑固な村人でなく、僕でも実際にそういう人がいたらひいてしまいます。にもかかわらず正義のために何もかも犠牲にするラクシュミの姿はまさにスーパーヒーローです。
さらに、ラクシュミに第2の幸運が訪れます。それはインドの高名な大学教授の娘パリー(ソーナム・カプール)。MBAもとった彼女は、研究熱心なラクシュミを支え、セールス、マーケティングなどに卓越した力を発揮します。女性の力が発揮されたことで、ラクシュミは一人ではなくなります。この、あたりでラクシュミが妻とパリーの間で揺れ動くプラトニックなロマンスを入れるというのもインド映画らしい、豪勢さです。
クライマックスは予告編でもある、ラクシュミは生まれて初めてスピーチをする場面。「カネをもうけても笑うのは自分だけ。みんなのための仕事をすればみんなが笑う」「英雄は国を強くしない。女性が、母が、姉妹が国を強くする」など、名言のオンパレードで、この部分だけでも、1800円の価値はあります。
豪華絢爛とともに、インドの貧困、女性差別の闇を突きつける、それでいてエンタメ性を失っていない。とにかくすごい映画でした。
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