2018年12月29日

シシリアン・ゴースト・ストーリー

 幻想と残酷な現実が入り交じったヨーロッパらしい作品。結構、映像が騙すので、頭で考えるより、心で受け止めるタイプの作品です。

 作品情報 2017年イタリア、フランス、スイス映画 監督:ファビオ・グラッサドニア、アントニオ・ピアッツァ 出演:ユリア・イェドリコフスカ、ガエターノ・フェルナンデス、コリーヌ・ムサラリ 上映時間:123分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:新宿シネマカリテ 2018年劇場鑑賞320本目




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 【ストーリー】
 1990年代のイタリア・シチリア島。13歳の少女ルナ(ユリア・イェドリコフスカ)は、クラスで孤立している同級生のジュゼッペ(ガエターノ・フェルナンデス)のことが気になり、学校帰り後を付ける。野良犬に襲われてしまったところをジュゼッペに助けられ、2人の仲は進展する。

 だが、ルナは母親(ザビーネ・ティモテオ)から、ジュゼッペと一緒にいないようきつくいわれる。そして、ジュゼッペは学校を何日も欠席してしまった。親も教師も大人達は何もいわない。ルナは彼の行方を必死になって探すが…

 【感想】
 冒頭からシチリアの風景をカメラがずっと追っ掛けるのだけど、そのシーンから意図がわからない。やがて、森に入ったジュゼッペのあとをルナがついていき、物語が動き出すのですが、説明シーンがないので、観客がこれはいったいどういうことで、どういうシーンなのかと想像するしかありません。

 従ってルナと両親のいびつな関係やジュゼッペの失踪にみんな黙っていることも最初はよくわからない。それが、物語が進むにつれて、次第に観客に提示されていくことになります。だから、邦画やアメリカ映画のように説明が過多な映画とは違うため、この部分を味わえるかどうか、人によって違うでしょう。マフィアというシチリアならではの事情も、ごく自然にでてくるので、そのへんの知識がないひとは取っつきにくいかもしれません。

 さらに、このシーンが現実なのか、それともリアルでないのかというのが判然としない場面が次々と出てきます。そもそもタイトルからして、ゴーストという意味は死んでしまって幽霊ということならばだれが死ぬのか、それとも、親や大人から存在を無視されている子供がゴーストなのかと深読みできます。少なくとも人を脅かすようなホラーではないので、むしろしっとりした映画が好きな人むけでしょう。そして、そのまま怒濤の終盤にはいると、ただただ画面を見つめることがやっと。実話を元にしているというのが、何ともいえません。

 まだ、子供でも、いや子供だからこそ一途に好きな人を捜し求めるルナ役のユリア・イェドリコフスカは映画初出演というからびっくり。大人の忖度とか都合の悪いことを隠すことを許せないというのは、この時期の子供だからこそ突きつける純粋さであり、彼女の目の強さや存在感はまさに、ルナにぴったりでした。そして、シチリアの美しいけれど、荒涼とした風景にひたすら引きつけられます。地中海だから暖かいはずなのに、寒々とした景色にみえるのは、大人達の心を反映しているのでしょうか。
posted by 映画好きパパ at 08:11 | Comment(0) | 2018年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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