2019年01月01日

死体が消えた夜

 これまで見たミステリー映画のなかでも、トップクラスのおもしろさ。ホラーかサイコかミステリーかとさんざんこちらをじらせたあげく、終盤の着地は本当にお見事でした。

 作品情報 2018年韓国映画 監督:イ・チャンヒ 出演:キム・サンギョン、キム・ガンウ、キム・ヒエ 上映時間:101分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:シネマート新宿 2018年劇場鑑賞324本目



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 【ストーリー】
 若き大学教授、ジンハン(キム・ガンウ)は、その日、妻のソリ(キム・ヒエ)を毒殺した。大手製薬会社の会長で、年下のジンハンを所有物としか扱わないソリとの仲は冷え切っていた上、教え子のヘジン(ハン・チアン)と不倫して妊娠させてしまった。不倫が妻にばれたら地位も財産も失うジンハンは、自分が開発した病死にしかみえない毒薬を使い、完全犯罪をもくろんだのだ。

 ところが、その夜、国立科学捜査院から電話が入る。夜間に警備員が何者かに襲われ、解剖のために保管されていたソリの遺体が消えてしまったというのだ。慌てて遺体保管所に向かったジンハンだが、ヘジンから突然電話がはいる。なんと、ソリの携帯から着信があったというのだ。ソリは生きていたのか、それともあの世からよみがえったのか。混乱するジンハンの様子に、所轄署の担当刑事、ジュンシク(キム・サンギョン)は、ジンハンが妻を殺害し、解剖前に遺体を隠したのではないかと、厳しく追及するが、さらに不可思議なできごとが起きて…

 【感想】
 冒頭、遺体保管所の監視カメラの画像が乱れ、停電が起きます。物音を聞いた警備員が懐中電灯を持って安置室に向かう場面は、今年みたホラー映画の中でも屈指の恐さでした。導入部からぐいぐい引きつけられます。さらに、ジンハンは国立科学捜査院の建物にはいったあと、ジュンシクから取り調べが終わるまで、建物の外に出ないよう命じられ、実質的な密室となります。そこで、次々と起きる奇怪なできごと。

 もっとも、ジンハンは科学者であり、オカルトめいたことは信じません。むしろ、自分の作った毒薬が効かなかったこと、さらには自分より悪知恵にたけた妻のほうが、それを逆手にとって自分とヘジンに復讐しようとしているのではと疑心暗鬼にかられます。このへん、化け物よりも人間の悪意のほうが恐いという意味ではホラー映画の鉄則ですね。しかも、ヘジンが若くて健気にみえるので、お腹の子供ともども無事なのかというのは、ジンハンのみならず気になってしまいます。

 一方、ジュンシクは一見、アル中でやるきのない、いい加減な男にみえながら、実は敏腕刑事。ジンハンのちょっとしたミスを見逃しません。そして、動揺するジンハンの矛盾点を次々とついていきます。クールな天才のジンハンが、前門の妻、後門の警察の挟み撃ちにあって、どんどん墓穴を掘っていく様子はなんとも哀れ。犯罪者としりながら、なんとか応援したくなるほど。

 そして、後半から怒濤の展開がまっています。いやあ、物語の途中で次はこうなるだろうという僕の予想がことごとく外れて、でも、しっかりと伏線が次々に回収されていく様子は本当に気持ちが良い。ミステリー映画でここまで、やられた、と思ったのは初めてではないでしょうか。たった一晩の出来事なのに、すべてが違って見えるという意味では、本当に練り込まれた脚本です。スペイン映画のリメイクだそうですが、韓国映画らしい、復讐、愛憎、権力者の横暴といったテイストがふんだんにかかっており、お腹いっぱいです。

 厳しくいえば、伏線を回収しきれていないところと、アンフェアな描写が1カ所ずつありましたが、好意的に見れば、理屈で説明がつかないことはないので、よしとしましょうか。難問を解くには、余計な情報に惑わされずに謎を解くべし、ということがよくわかります。ラストも本当にお見事でした。
posted by 映画好きパパ at 07:26 | Comment(0) | 2018年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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