作品情報 2018年日本映画 監督:塚本晋也 出演:池松壮亮、蒼井優、塚本晋也 上映時間:80分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:渋谷ユーロスペース 2018年劇場鑑賞325本目
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【ストーリー】
幕末、農村で農家の手伝いをして生計を立てている浪人の都築杢之進(池松壮亮)は、村娘のゆう(蒼井優)と親しくなり、手の空いたときはゆうの弟の一助(前田隆成)に剣術を教えながら、穏やかな日々を過ごしていた。
ある日、村を訪れた剣の達人、澤村次郎左衛門(塚本晋也)が杢之進に目をとめる。澤村は浪人を集めて、動乱の京都で一旗揚げようとしていたのだ。ゆうの反対にもかかわらず、一助もついていこうとしている。だが、そのころ、村は食い詰め浪人の野盗の群れに狙われていた…
【感想】
大音響の効果音、BGMに、巨木が並ぶ神社の境内(庄内がロケ地でしょうか)の緑など、塚本監督の美学が炸裂。冒頭、手持ちカメラで杢之進と一助の剣術の稽古を映し出すシーンは目が回りそうになりましたが、カメラワークもしょっちゅうかえて、凝った作りになっています。
侍にとって斬るということはどういうことなのか。剣術が強い自分が農家で穏やかに暮らすと言うことは侍の道をはずれているのではないか。そんな若者時代特有の悩みがつきまとう杢之進。塚本監督がわざと現代の口語に近い形で演出しているだけあり、何者でもない自分という今風のテーマがうまく時代劇とマッチしています。
さらに、杢之進は稽古では強いのですが、本番ではダメでした。それは剣術だけでなく男女の仲でも一緒で、余計に彼のひ弱さというところが目立ってしまいます。それは幕末の武士の時代では許されない弱さでした。普通の時代劇だったら、ぜったいに杢之進が立ち上がる場面でもなすすべないまま。一方、澤村はそんな彼を一人前の男にしようという、一昔前の家長のようなもの。ゆうも含めて一種の疑似家族的な存在になっていたのでした。
それからの成長物語とみせつけ、結局は杢之進が一人前になったのか、それとも、一人前にならなかったのか、見る人によって違う印象になります。このへんは旧来の日本的な大人像、あるいは勧善懲悪の時代劇に対して、塚本監督の意地の悪さを感じます。アクションもそうで、ずっとみせないでいて、後半にためるとみせかけながら、何ともいやらしい撮り方でした。このあたり、巧いけどこの作品にはまるとまではいかなかったかな。
塚本監督が時代劇の剣豪にあっているというのは驚きだったし、池松の二面性のある役柄もよかったけど、なんと言っても蒼井優のエロさ。いやあ、すましたサブカル女優という認識だったので、本作の泥臭い、エロさには感動しました。野盗のリーダー役の中村達也の存在感も前作の「野火」に引き続きしびれた。好みは分かれるでしょうけど、癖のある、塚本監督らしい作品でした。
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