作品情報 2018年日本映画 監督:前田哲 出演:大泉洋、高畑充希、三浦春馬 上映時間:120分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ渋谷 2019年劇場鑑賞2本目
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【ストーリー】
1994年、札幌市。重度の筋ジストロフィー患者で身動きができない鹿野靖明(大泉洋)は多くのボランティアに支えながら、一人で自立する生活を送っていた。病院に閉じ込められるのを嫌ったこともあるが、欧米では当たり前の重度障害者の自立した生活は当時の日本では先駆的で、その道を切り開こうとしていたのだ。
体は動かなくても口が達者な鹿野はボランティアをこき使い、王様のように暮らす。ボランティアをしている恋人の医大生、田中(三浦春馬)の様子を見に来た美咲(高畑充希)は、わがまま放題の鹿野に反発する。だが、田中に引きずられるようにボランティアを続けていくうちに、だんだん鹿野の自由さと純真さに気づくようになり…
【感想】
障害者といえばかわいそうで、心優しいひとたち。周囲の善意に感謝しながら生きている。わがままをいうにしても、病気で理不尽な目にあったことにたえられないからでやむをえないからだ。そんなステレオタイプな見方を覆す、パワフルな鹿野の存在。実際、自分がボランティアになったら、とても耐えられないと思うし、映画でも「障害者なのに楽しそうにしている」という理由でボランティアをやめる人も登場していましたが、人間なんて本当はそんなものなんでしょう。
だから、鹿野を嫌うひとがいる一方で、どんなに邪険にされても彼と波長があって、私生活を犠牲にしてまで支えようとする。あるいは医師としてわがままな鹿野にとことんこたえる。そんなごく当たり前のことを、ごく当たり前に撮っているのが良かった。きれい事だけでなく障害者の性処理とか排泄とかも、さりげなく提示しています。それも含めて、人間は生きているわけで、女にもてたく、うまい肉や酒を楽しみたいという普通の欲望を障害者だから否定するというのはおかしなわけです。そして障害者も生を謳歌していいんだということが、車椅子にのった少年とか、若い世代の手本になっていく。
一方で、親に対する複雑な思いというのも、映画的な表現かもしれませんがよくでていて、特に母親(綾戸智恵)との間合いの取り方というのは、いろいろ考えさせられるものがありました。
大泉は地元北海道が舞台ということもあるのでしょうが、アテ書きといっていいぐらいはまっていましたが、ヒロイン役の高畑も、ああ、こういう演技ができるんだというすごさをみせてくれました。テレビドラマではどちらかといえば極端な役が多いのだけど、ここには地に足がついた美咲という一人の女性の、とまどい、嫌悪、恋慕といったさまざまな表情をリアルにみせてくれます。やさしいけど打たれ弱いエリート役の三浦春馬とも、あくの強い大泉とも息はぴったり。高畑というよりも、美咲という魅力的な女性と出会えたことも、この映画の長所だといえましょう。
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